アメリカ、キャリアごとのiPhoneのAPN設定の可否
ドコモがiPadを発売開始するのでiPadのキャリアプロファイルが更新され、一部のドコモMVNOのAPN設定が出来なくなったため、テザリングが出来なくなったというニュースが出てますね。
そこで、アメリカのキャリアの状況を調べてみました。
筆者の経験的な理解では、iOS端末のキャリアプロファイルは、挿入したSIMのMCC/MNC(Mobile Country Code、Mobile Network Code)で決まってくると認識しています。
つまり、挿入したSIMのキャリアの「国と、キャリアコード」で、iOS端末のどのキャリアプロファイルが選択されるか決まります。
たとえば、
MCC Mobile Country Code |
MNC Mobile Network Code |
キャリアプロファイル名 数字は現在のバージョン |
|
AT&T | 310 | 410 | AT&T 16.0 |
T-Mobile US | 310 | 260 | T-Mobile 16.1 |
Verizon(LTE) | 311 | 480 | Verizon 16.0 |
Sprint(LTE) | 310 | 120 | Sprint 16.0 |
ドコモ | 440 | 10 | ドコモ 16.0 |
ソフトバンク | 440 | 20 | ソフトバンクモバイル 16.1 |
KDDI au(LTE) | 440 | 50 | KDDI 16.1 |
KDDI au(CDMA2000) | 454 | 04 | 3 16.0 3=Hutchison Telecom(香港) |
そしてMVNOのSIMは、使用している回線業者のMCC/MNCを使用していますから、ドコモのMVNOなら、全てドコモのキャリアプロファイルを使用します。
各キャリアごとのキャリアプロファイルには、APNのデフォルト設定や、通信関係の選択ボタンの有無は表示などが指定されています。
もし、アップルの公式通信業者ではないSIMを挿入すると、ジェネリックの「Carrier Lab」キャリアプロファイルが選択され、APNなどの設定は手動で入力しなければなりません。
さて、アップルの公式通信業者になった場合には、その公式キャリアプロファイルにどのような違いがあるのでしょうか?
※ 以下、iPadでも状況は同じですが、今、急ぎのため、iPhoneで検証します。帰宅してから時間があれば、iPadの状況も追加します。
■ T-Mobile USの場合:
「設定(Settings)」を起動して、「モバイルデータ通信(Cellular)」をタップすると、・・・
※ ちなみに「設定(Settings)」のメインメニューで、「キャリア(Carrier)」も選べますね。
「モバイルデータ通信ネットワーク(Cellular Data Network)」が選択できて、APNが手動設定できますね。
この挙動は、T-Mobile USのMVNO(ZIP SIM(旧Ready SIM)など)のSIMを挿入しても、同じです。
したがって、T-Mobile USのMVNO(ZIP SIM(旧Ready SIM)など)ではテザリングが可能です。
■ AT&Tの場合:
「設定(Settings)」を起動して、「モバイルデータ通信(Cellular)」をタップすると、・・・
「モバイルデータ通信ネットワーク(Cellular Data Network)」項目がありません。APNが手動設定できません。
この挙動は、AT&TのMVNO(H2O、Net10、StraightTalkなど)のSIMを挿入しても、同じです。
したがって、AT&TのMVNOのSIMではテザリングが不可能です。
以下は、Net10 AT&T回線用SIMを挿入した場合です。(回線使用期限が切れているので、信号は「No Service(圏外)」と表示されています。)
AT&TのMVNOのSIMの場合にはAPN設定が手動で出来ないので、APNChanger(http://www.unlockit.co.nz/)というサイトを使って希望MVNOのAPNを設定するか、iPhone構成ユーティリティ(Configuration Utility)でMVNOのプロファイルを作成して、それをインストールします。(通常、各MVNOのサポート・サイトで構成ファイルは用意されていて、ダウンロード出来ます。)
■ Verizonの場合:
「設定(Settings)」を起動して、「モバイルデータ通信(Cellular)」をタップすると、・・・
「モバイルデータ通信ネットワーク(Cellular Data Network)」項目がありません。APNが手動設定できません。
Verizonは現在MVNOにLTEのアクセスを許可していませんので、VerzionのMVNOのSIMは存在しません。(アメリカではCDMA2000の3G回線だけの契約では、SIMは発行されません。)
■ Sprintの場合:
「設定(Settings)」を起動して、「モバイルデータ通信(Cellular)」をタップすると、・・・
「モバイルデータ通信ネットワーク(Cellular Data Network)」項目がありません。APNが手動設定できません。
SprintもVerizon同様、現在MVNOに関しては(一部例外を除いて)LTEのアクセスを許可していませんので、SprintのMVNOのSIMは(一部例外を除いて)存在しません。(アメリカではCDMA2000の3G回線だけの契約では、SIMは発行されません。)
さらに、Sprint回線を使用するLTE端末は、SIMと端末のロック(紐付き)現象がありますので、まあ、SprintのMVNOで、SprintのLTE端末を使用するのは、現実性がありません。
■ GigSky(イタリアTIM)のSIMをアメリカで挿入した場合:
最後に、アメリカ国内ではAT&Tの回線を使うGigSky(イタリアTIM)のSIMを、アメリカ国内で挿入しています。
TIMのMCC/MNCは、「222、01」です。
AT&Tの回線を使用していますが、キャリアプロファイルはTIMです。
「設定(Settings)」を起動して、「モバイルデータ通信(Cellular)」をタップすると、・・・
※ ちなみにこの場合も「設定(Settings)」のメインメニューで、「キャリア(Carrier)」も選べますね。
「モバイルデータ通信ネットワーク(Cellular Data Network)」が選択できて、APNが手動設定できますね。
つまり、どのキャリアプロファイルを使用するか、また、APNが設定できるかは、使用回線ではなく、SIM(のMCC/MNCコード)に依存することがわかります。
■ 以上から、必ずしもiPhone(iPad)公式キャリアになったら、そのMVNOのSIMでは全てAPN設定が出来なくなるわけではない、テザリングが出来なくなるわけではない、ことがわかります。
T-Mobile USやTIMのように、キャリアがそう決定すれば、APNの設定を自由に手動設定できるようにすることは可能ですね。
AT&Tのように、そうしていないキャリアもありますが。
当方も今回のSIMフリーiPadのテザリング問題を取り上げていたのですが、疑問が解決しました。ありがとうございました。