T-Mobile USが、700MHz(Aブロック)Band 12をVerizonから購入か


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T-Mobile USは現在、AWS(上り1700MHz/下り2100MHz) Band 4でLTEサービスを提供していますが、高周波数ではビル内部への電波の透過がしにくいため、低周波数の電波使用権獲得を模索していました。

これに対し、Verizonは2008年の政府の電波競売で「700MHz(Aブロック)Band 12」を約26億ドルで権利獲得していましたが、Verizonはその後「700MHz(Cブロック)Band 13」でLTEサービスを開始し、CATV会社などから2011年12月に購入したAWS Band 4でも最近、大都市でLTEのサービスを開始しています。

T-Mobile USは2014年1月に予定されていた600MHz帯域の電波使用権競売に参加するのではないかと予想されていましたが、先月、その意思は無いことを表明していました。Sprintも周波数600MHzの使用権競売には興味が無いことを表明しており、結果的に、この電波使用権競売は、将来的に「どこでもTV」のサービスの提供の必要性を感じている衛星放送会社、DISH TVだけが競売参加の意思を表明していました。しかし、アメリカ政府FCCはDISH TV以外の他の通信会社からの興味が薄いことから、この競売を延期することになりました。

Bloomberg誌によると、Verizonは同社には不要となった700MHz(Aブロック)Band 12をT-Mobile USに約30億ドルで売却することに、今週中にも最終的に合意するらしい、とのことです。この交渉は先月後半から情報がリークされており、AT&Tも興味を示していたようですが、最終的にT-Mobile USに落ち着きそうです。T-Mobile USがVerizonから購入する予定のBand 12使用権は、全米人口カバーで約1億5000万人分(カバー率約50%)で、T-Mobile USは大都市で既存のBand 4を補完するために使用するとみられます。

【Bloomberg】Verizon Said to Be Near Airwaves Deal With T-Mobile – 2013年12月13日

T-Mobile USは2013年11月上旬、6620万株の新規株を売却し、約18億ドルの資金調達をしています。更に、2013年11月18日には20億ドルの社債発行の手続きをしています。
【FireceWireless】T-Mobile to raise $1.8B in stock sale, could use funds to buy spectrum – 2013年11月12日
【Gigaom】T-Mobile is adding $2B to its acquisition war chest with bond sale – 2013年11月19日

T-Mobile USはこれらで得た資金を、Verizonからの700MHz(Aブロック)Band 12購入資金に当てる予定と見られています。

また、Verizonはこの交渉では現金のほか、T-Mobile USが所有しているAWS Band 4の使用権も一部の都市で要求しているようで、そのBand 4は、VerizonがBand 4使用権を持っていない地域でのLTEサービスに使用する予定のようです。

なお、700MHz(Aブロック)Band 12は、既に地域携帯会社U.S. CellularやC Spireなどが一部の地域でのLTEサービスに使用しています。

今年はじめ時点でアメリカキャリアランクは、加入者数ベースで
1位 Verizon
2位 AT&T
3位 Sprint
4位 T-Mobile
5位 MetroPCS
6位-7位 Cricket
6位-7位 US Cellular
でしたが、今年5月1日にT-MobileとMetroPCSは合併、そして今年7月にAT&TはCricketの買収を発表し、既にFCCなどの規制や株主総会承認などはクリアしていますので、来年早々に正式にCricketはAT&Tの一部となります。

したがって、残っている中小(地域)携帯会社で最も大きいのがUS Cellular。T-Mobile USがBand 12の使用権を獲得すると、将来的にT-Mobile USがUS Cellularの買収の興味を示してくる可能性もあります。

更に、AT&Tは2013年9月に、AT&Tが今後販売する機種はBand 12へ互換性を持たせることを発表しています。AT&Tの既存のLTE使用バンド、Band 17は、Band 12に内包されています。
【ScreenDigest】AT&T avoids legal trouble by opening up 4G interoperability – 2013年9月12日

したがって、AT&T、T-Mobile US、US CellularやC SpireなどがBand 12を軸に連合を築いたり、合併・買収などで寡占される可能性が出てきました。



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関連すると思われる記事:

「T-Mobile USが、700MHz(Aブロック)Band 12をVerizonから購入か」への6件のフィードバック

  1. SprintがT-Mobileの買収を目論んでいるようですが、現地の人からすれば歓迎なのでしょうか?

    管理人 返信:

    今の時点では、歓迎も何も、「何を夢物語を話しているの?」という感じですね。

    1.
    SprintはLTEの整備およびサービスエリアの広さでは、4大キャリアの中で最も遅れています。
    そもそもバックボーン(基地局とスイッチングセンターとの固定高速通信)の整備から始めなければならず、都市数を稼ぐために、主に地方の小都市から始めています。
    大都市でまだSprintのLTEの恩恵を受けていない加入者の数は、多いです。
    SprintはLTEのサービス都市数は発表していますが、人口カバー率はまだ発表していません。おそらく、50%もいっていないと思います。
    そして、その大都市ではスマホの普及率は上がっていますが、データ通信回線の改善がまだ行われていないため、3Gは混雑してとても遅くなっています。

    その状態で加入者を引き止めるために「データ通信は生涯使い放題」とかスローガンを出してマーケティングしています。Sprintは、以前からデータ通信に関しては「使い放題」プランしかありませんでした。2013年7月、ソフトバンクから買収された直後にこれに「生涯」という言葉を追加しましたが、それでも2013年第3四半期の加入者純減は止まらず、3ヶ月で100万人弱の加入者減です。

    それに対し、T-Mobile USはSprintから遅れること1年後の2012年10月ころからLTE整備を開始し、既に人口カバー率で全米の3分の2以上の人口をカバーしています。契約プランもどんどん斬新なプランを導入し、VerizonやAT&Tを脅かしています。

    T-Mobile USの即戦力、決断力、瞬発力は広く評価され、ポジティブに受け取られています。Sprintと違って、T-Mobile USは2013年第3四半期の加入者純増は110万人以上です。

    このSprintとT-Mobileの加入者純減・純増ペースが続けば、6ヶ月から1年以内にSprintが第4位に転落し、T-Mobileが第3位になります。

    逆に、T-MobileがSprintを買収してくれるほうが、歓迎ですね。
    しかし、T-Mobileの主要株主(67%)であるドイツテレコムにはそういう野望は無く、T-Mobileの業績を上げて株価を吊り上げ、できるだけ早く株を全部売って現金に変えて、アメリカ事業から撤退したいのですが・・・

    2.
    Sprintの株主(Sprintの株の20%は、一般取引されています。)も同じ気持ちでしょう。
    「まず、Sprintを立て直して、株価を上げてから、他社買収の話を考えろ」という非難が出るでしょう。
    ただし、20%しか投票権がありませんから、言っても、孫氏の行動には影響無いかもしれませんが。
    でも、買収の提案内容次第では株主からの損害賠償裁判が起こる可能性があります。

    3.
    T-Mobile USの株主(T-Mobileの株の33%は一般公開株。残りはドイツテレコムの所有。)も同じですね。
    「我々の方が業績見通しが良いのだから、もっと(1株あたり)高値で買収案を出せ」と要求するでしょうし、DISH TV、AT&Tなどが競合買収提案を出して、値が吊り上る可能性があります

    4.
    SprintとT-Mobile USは3G通信はまったく違う通信方式です。SprintはCDMA2000、T-Mobile USはW-CDMA/HSPA+。
    LTE周波数も、共通点がありません。
    合併したとして、どちらかの加入者約4000万人~5000万人が、2年以内に新しい携帯に買い換えないといけません。

    そのお金は、誰が出してくれるのでしょう?

    しかも、合併すると、LTEの周波数が4つ、または、5つに増えます。合併後のLTEの通信管理は、どうするんでしょう?

    ---------
    今から5~7年後にはアメリカではCDMA2000電波は停波されるでしょう。そのときには携帯通信は、90数%以上はLTEのみで行われるようになるでしょう。
    そのとき、または、そのメドが立った今から2~5年後にこの2社が対等合併、または、どちらかがどちらかを買収、ということは考えられると思います。

    しかし、今の段階で、大きいけどガタガタのSprintが、ちょっと小さいけど躍進中のT-Mobileを買収するのは、構図としておかしいです。

    孫氏がT-Mobileを買うことを急いでいることはわかります。なぜなら、今買わないと、T-Mobileはもっと業績が良くなり、近いうちにSprintを抜き、買収価格が上がるだけでなく、T-Mobileを買収したい競争相手が増えてきますから。

    でも、孫氏がよほど博打を打って、クリエイティブな買収提案/買収資金捻出をしない限り、「現時点での」この話の実現性は、40%(半数より下)ですね。

  2. ロイターやWSJを見てると、Sprintは来年の1月にもT-Mobile USの買収に入札とあったのですが、そもそもT-Mobile USは売却の対象となっているのでしょうか?個人的にはSoftBankは嫌いなのでこれ以上余計なことはして欲しくないですが。

    管理人 返信:

    >そもそもT-Mobile USは売却の対象となっているのでしょうか?

    どんな会社も、お金さえあれば、買えますよ。

    T-Mobile USの主要株主であるドイツテレコムは、現在、T-Mobile USの約67%の株を所有しています。
    T-Mobileは今年5月1日にMetroPCSと合併しましたが、そのときの契約条件として、合併後数年(公式発表は無いが、多分2年)の間は、株を徐々に切り売りしていくことを禁止されています。ただし、一度に全株を売ることは、契約上、許容されています。
    ドイツテレコムは以前からアメリカの市場から手を引き、ヨーロッパなどの地元のLTE設備投資に資金力を集中したがっています。

    したがって、T-Mobile USの主要株主であるドイツテレコムは、T-Mobile USの株67%を売る気持ちはあります。
    ドイツテレコムはT-Mobile USの過半数(2/3)の株を所有しているので、議決権でも、他の株主はドイツテレコムのすることに反対できません。

    孫正義は、少なくともこのドイツテレコムの所有するT-Mobile株を、Sprintの名前で買わせたいものです。

    T-Mobile USの残り33%の株をどうするつもりなのか、分かりません。それも買うとなると、更に(現在のT-Mobile USの株価で計算すると)100億ドル(1兆円)のお金が必要になります。
    残りの株も買うと、T-Mobile USはSprintに完全に買収されてしまいます。
    残りの株を買わないで、ドイツテレコムの株だけ買うとすると、T-Mobile USは主要株主がSprintになりますが、独立した別の会社として運営が続けられます。この場合、T-Mobile USは、Sprintの連結子会社になります。Sprintは、ソフトバンクの連結子会社です。

    SprintがT-Mobile USの買収提案をしたからと言って、必ずしも、それで自動的にT-Mobile USがSprintに買収されるとは限りません。
    何が起こるかというと、
    1.DISHネットワーク、AT&Tなどから競合買収提案が出される可能性があります。その場合、T-Mobile USの株価が吊りあがって、買収に必要な金額が上がります。
    2.FTC(公正取引委員会)により、「SprintによるT-Mobileの買収」は携帯市場での競合を減らすので、消費者の不利になるため、買収不許可の判断が下されることがあります。
    また、許可されたとしても、条件付き許可となり、一部の電波や市場(SprintとT-Mobileが重複している地域)をSprintが手放すことを強いられることがあります。
    3.FCC(通信委員会)により、買収(合併後)のSprintの電波の使用権が多すぎて不公平になるため、電波(周波数)の一部を他社に手放さないと買収を認めないという指導がされることが考えられます。
    4.T-Mobile が完全にSprintに買収される場合には、周波数の互換性が無いため、T-Mobileの加入者はSprintの携帯に買い換えることが必要になるでしょう。それを嫌って、他のキャリア(特にAT&TやVerizon)に流れていく加入者が多くなり、Sprintの純減が止まらない可能性があります。

    他にもいろいろ考えられますが、
    (1)SprintがT-Mobileの買収提案を提出したとしても、それが即、SprintによるT-Mobile買収に繋がらない。
    (2)SprintがT-Mobileを買収できたとしても、その後、その買収が経営的に「成功」するかどうかは分からない。
    という事が言えます。

  3. 日経の記事ですが
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD240RP_U3A221C1MM8000/?dg=1
    この記事だといかにも既成事実みたいな書き方なんですが、正直あの胡散臭いSoftBankがここまでするにはよっぽど移動体通信業というのはおいしい商売なんでしょうね。
    しかし北米市場はヨーロッパ勢がどんどん撤退してますね。

    管理人 返信:

    孫正義氏は以前からそうですが、多少、自己愛的性格があるんでしょうね。
    自分の頭の中で「こうしなければならない」という信念が出来て、その目的のためには周囲のことを考えずに動いているように感じます。
    今回の買収劇も、孫氏とドイツテレコムが、SprintとT-Mobileとは頭越しにして、勝手に話をしているようですね。

    結局、Softbankの80%子会社であるSprintは、自分(Sprint)の意思とは関係無く、T-Mobile買収提案は出すでしょう。
    80%主要株主には逆らえませんからね。
    しかし、SprintとT-Mobileの社長や役員の意見を無視してやっているところが問題ですね。

    親同士(孫とドイツテレコム)が勝手に「お前ら(SprintとT-Mobile US)、結婚(合併)せぇ」と言って、買収・合併後にうまくやっていけるとは限りませんね。
    そもそも、T-Mobileは、今年2013年3月以降、他のアメリカの携帯会社(VerizonやAT&T)を脅かすような画期的なプランや販売政策を出しており、今、一番伸びている携帯会社です。それがSprintに買収され、今のSprintの応戦型販売戦略や、加入者を四半期で100万人単位で純減させている状況に組み込まれ、新しい画期的な販売戦略を出せなくなると、(買収後の元)T-Mobile社員や幹部は嫌気が刺して、皆、会社を辞めていくでしょう。
    顧客も同じですね。T-Mobileのこれまで発表した通信プランや販売戦略が無くなると、客も逃げていきますね。

    孫氏は、SprintがT-Mobileを買収提案をしても、不当競争になることを理由にFCC、FTCや司法省の認可が降りないことも可能性としてあることがわかっています。
    したがって、万が一、買収提案が規制当局に反対された場合、T-Mobile USに手切れ金を払わなくても良いように画策しています。(2年前にAT&TがT-Mobile買収を提案したとき、司法省に反対され、その結果としてT-MobileはAT&Tから30億ドルのBreak-up Feeを受け取っています。)

    まあ、リンク先の記事は、ガセネタの多い日経ですからね。

    買収提案後、本当に規制当局から認可されるかどうかの確率は、私は50/50かそれ以下だと思っていますが。
    しかし、買収手続きが規制当局で審査されてみないと、わからないですね。

    ソフトバンク(孫氏)は1990年代後半にもアメリカの企業を数多く買収し、アメリカの出版・メディア・ソフト・ハード業界に混乱を招きました。
    合併した複数企業を統一させようとして、各会社のカルチャーが衝突して失敗。
    中には買収後、2~3年で元の経営者がソフトバンクから買い戻した会社もあります。

    今回も、SprintとT-Mobile USが今の時点で合併すると、同じ結果になると心配になります。
    結果的に、両社をだめにするような気がします。

    >しかし北米市場はヨーロッパ勢がどんどん撤退してますね。

    ヨーロッパはリーマンショック以来、一般的に経済状況が悪いです。
    結局、アメリカのサブプライムローン債権を買わされたのは、(当時のヨーロッパの金融規制の甘さの関係で・・・)多くがヨーロッパの銀行や団体でしたからね。
    ヨーロッパのキャリアも同じで、地元欧州での経済の不況による収入源と、資金不足のために、LTEの導入(設備投資)が遅れています。
    したがって、ヨーロッパのキャリアは、他大陸で投資している電話事業を売却し、その金でヨーロッパ圏内のLTE整備をしたいのです。

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