食品スーパーSafewayのディジタル・クーポンが、全米展開
アメリカでWalmartに次ぎ、Krogerと2位・3位を競う食品スーパーチェーン、Safewayがディジタル・クーポンをシアトル・ポートランド地域で2012年5月18日に始め、
Safeway Launches Just for U Digital Savings in Portland and Seattle – 2012年5月18日 Progressive Grocer誌オンラインニュース
急速に全米に広めています。
筆者が住んでいるコロラド州デンバー周辺では、2012年6月20日の週ごろから、Safeway「Just for U」プロモーションが始まりました。
アメリカの全米チェーン食品スーパーマーケット(Safeway、Kroger、Albertson【Albertsonは会社更生法適用後、2006年に投資グループに売却されて以来は、会員カード廃止】、など)は、2000年ごろに無料の「会員カード」を発行し、「そのカードをレジでスキャンしないと、特売価格が適用されない」ことで、強制的に買い物客が「会員カード」に加入することを推奨し、買い物ごとに毎回会員カード(会員番号)をスキャンすることで、その買い物客の購買動向(POSデータ)を収集してきました。(このカードをレジでスキャンしないと、買いたい商品が特売中であっても、特売価格では商品が買えないのです。)
(King SoopersはKrogerが買収したコロラド州内最大のスーパーチェーン。Krogerは他州への拡大に、その州内のメジャーチェーン店を買収して拡大し、買収後も買収前の名前で継続営業している例が多い。コロラド州King Soopers、カンザス州Dillon’s、カリフォルニア州Ralphs、など。)
コンシューマーとしてはその後しばらくは何も起こらなかったのですが、数年後(2005-2008年ごろ?)、2-3ヶ月に一回、自宅に郵便でクーポンが届くようになりました。
このクーポンは、それぞれの消費者の買い物傾向(POS分析)を反映して、それぞれカスタマイズされたクーポンのようでした。クーポンは、20枚(20アイテム)くらい付いていました。その中には、必ず1枚は「無料」クーポンがありました。たとえば我が家では、よく子供が週末のお昼に食べる冷凍ピザの「1枚無料」クーポンが付いていましたね。そういうのを餌にして、店に来させようとしているのですね。
しばらくしてその郵送されるクーポン・ブックも無くなり、そのうち、毎回買い物をしてレジで支払うと、レシートとともにもうひとつのプリンターでクーポンが1~2枚吐き出されるようになりました。このときに印刷されるクーポンは、その時の買い物の内容や、その買い物客の過去の購買履歴を分析して、どの商品のクーポンを出すか決められているようです。現在も、このシステムは続いています。
あとでわかったことですが、これらの「Checkoutプロモーション」は、それぞれの食品スーパーが独自に考えてやっているのではなく、「Checkoutプロモーション」専門の会社があって、どこのスーパーにも似たようなシステムを納入しているようです。
その最大手のCatalina Marketing Corp. は日本支社もあり、
Catalina Marketing Corp.ホームページ
最近では食品スーパー業界のモバイルプロモーション最先端の会社、Modivを買収しています。
スーパーで買い物中にスマフォでバーコードをスキャン⇒買い物合計が判って、関連クーポンが画面に提案される。 - 2012年5月3日
上のリンクで紹介したModivが開発した「Stop & Shop」ストアでのアプリでは、買い物を一つ一つカートに入れながらバーコードを自分でスキャンして、チェックアウトがセルフで出来るほか、スーパー内で棚の列を巡回すると、自動的にある商品の前で、その商品のクーポンも出るそうです。
下をクリックすると、「Stop & Shop」の店内買い物体験ビデオが見られます。
Speedy, Personalized Grocery Checkout
以下、ビデオからフレームをいくつかキャプチャーした画像です。
「Stop & Shop」では、店内に入ったらバーコード・スキャナー・ステーションで会員カードをスキャンし、(買い物袋もここでピックアップできます。)
指定されたバーコード・スキャナーを取ります。
バーコード・スキャナーを取った時点で、会員カード番号に基づいた、過去の購買履歴を反映したパーソナライズされたクーポンがスクリーンに(複数アイテム分)ロードされています。
通路にも棚にバーコードがあり、それをスキャナーでスキャンすると、商品価格やクーポン割引があるかどうかがわかります。
買い物途中で商品のバーコードをスキャンしながら、買い物袋に自分で入れて行きます。
買い物が済んだら、セルフレジでスキャナーと同期すると、買い物リストがセルフレジに転送されます。
バーコード・スキャナーでスキャンしなかった商品は、セルフレジで追加スキャンすることも出来ます。
商品リストに間違いが無ければ、クレジットカード/デビットカードなどで支払いを済ませ、そのまま店を出ることが出来ます。
上のビデオは、2011年1月に初放映された、ファイナンシャル専門CATVチャンネルのCMBC特集番組、「Supermarkets Inc.: Inside A $500 Billion Money Machine」の中の一セグメントです。
Supermarkets Inc.: Inside A $500 Billion Money Machine
話はちょっと飛びましたが、・・・
店舗数や来客数の多い全米チェーンのスーパーではスキャナーなどの装置を店内に用意するのはコストがかかります。
したがって、上に紹介した「Stop & Shop」の店内セルフスキャンシステムの導入は、まだ数年先のことでしょう。
しかし、この「Stop & Shop」のシステムを開発したModiv社は、アメリカの大きなスーパーには既に参入している「Checkoutプロモーション(Promotion at Checkout【Cash register】)」の最大手、Catalina Marketing Corp. に今年の5月に買収されたのです。
つまり、Safewayが始めたディジタル・クーポン「Just for U」システム、Krogerのディジタルクーポン(まだ、試験段階?)などは、将来的には現在「Stop & Shop」で行われているセルフ・チェックアウトシステムへの進化も考えられて進められている、と考えるべきです。
■ 現行のSafeway「Just for U」ディジタルクーポンの仕組み
さて、現在のSafeway「Just for U」ディジタルクーポンの仕組みを簡単に説明します。
カードの登録
まず、オンラインまたは店頭でSafeway Club Cardを、「Just for U」用にアップグレードします。
既存のSafeway Club Cardは、住所・電話番号・氏名を書いて紙ベースで申請し、受け取ったものです。
今回、「Just for U」ディジタルクーポンを使用するためには、既存のSafeway Club Card番号に、Eメールアドレス/パスワードを追加登録することで、無料「アップグレード」されます。
ディジタルクーポンをロードする
Safewayホームページにアクセスし、
Safewayホームページ
登録したEメール/パスワードでサインインします。
一般クーポン(「Coupn Center」)、過去の個別購買履歴に基づいた「Personalized Deals」個別クーポン、個別購買履歴に基づいた買い物リストで現在「今週の」店頭特売になっている商品のリスト(「Your Club Specials」)の3つのセクションに分かれています。
「Personalized Deals」をクリックすると、確かに自分が良く買う商品がリストされています。
その商品のクーポンを、自分のSafeway Club Card会員番号にロードするには、「Add」ボタンをクリックします。
いくつでもクリックできます。
既にクリックした商品は、「Added」と表示されます。
このディジタル・クーポンは、リアルタイムでSafeway Club Card会員番号に「紐付け」されます。
買い物にディジタルクーポンを利用する
一度ディジタル・クーポンをロードして自分のSafeway Club Card会員番号に「緋付け」してしまえば、そのクーポンの期限切れ前にその商品を購入し、レジでSafeway Club Cardをスキャンすれば、自動的に購入商品と照合され、利用可能なディジタル・クーポンがレジで適用されます。
ディジタルクーポンはリアルタイムでロードされるので、店内でスマフォやタブレットなどでSafewayのホームページにアクセスできる端末を持っていたり、Safewayアプリをインストールしておけば、商品棚を見ながら買いたい商品・買った商品のディジタルクーポンを、レジでチェックアウトする前に追加することも可能です。
消費者としての問題点・苦情
過去の購買履歴に基づいて個別プロモションがあるのはうれしいですが、どの商品がプロモーションになっているのかを調べるのに、毎週、スーパーのホームページをチェックしなければならないのは、困りモノです。
消費者としては、この際、全てのディジタルクーポンを、「全部」自動的にロードするオプションを、作って欲しいです!
・・・というのは、売るほうの小売店側からすると、ダメなのかな。
「どの商品が特売なのかわからないと、消費者に買ってもらえないから」・・・という主張が、小売店側から出て来そうではあります。
まあ、iPhoneアプリがあるから、今度は店内で買い物のときに利用してみようか・・・
サインイン画面、
メニュー画面
個別ディジタル・クーポン画面
既に会員番号に「紐付け」済みの、ロードされたディジタルクーポンのリスト画面