一夜明けて、観光庁(?)の訪日客向け無料無線LANサービスについて、確認と追加コメント


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さて、筆者の昨夜の記事はとてもアクセスが多くて、一夜明けて起きてみたら久しぶりにびっくりしました。
しかし、他の海外在住日本人の方々も批判していて、それもかなり賑わっていたようで、このサイトだけではなかったのですね。

しかし、筆者が問題にしているのは、2点あります。
● 本人認証方法 = 日本に到着してパスポートを見せるのが、ベストな方法なのかどうか。

特にイマドキ、SIM認証でWiFiが使えるようになりかけている時代に、IT先進国日本が、成田空港の検問所みたいに「パスポート見せて、100%まるまる信用」って方法しかないのかどうか、考えて欲しい。

今は、アプリも世界中でダウンロードできる。本人認証は、クレジットカードからの住所や年齢検索、現地免許証も可だし、どうしてもパスポートでなければならないなら、アプリ経由で事前にスマホでパスポートの写真を撮って、セキュアな送信経由でスマホから送る・・・ということも、不可能ではない。

日本へ「海外旅行」を考えている外国人にとって、日本人と同じく、「海外旅行」は事前に調査して、準備万端で行きたい人もいる。したがって、この無料無線LANサービスのID設定が、使用予定の端末に日本へ到着する前に設定できれば、とっても、とっても便利でしょう。
これにより、日本側の空港やホテルなどのスタッフの教育や増員も不要だし、運用コスト削減になります。

● 現行の電波通信法で技適マークの無い端末は、日本国内でのWiFi/Bluetoothを含む全ての電波の発信を許可されていないのに、なぜ、それを奨励するようなことを、しかも、政府の一機関が公的に行うのか?

我々のように海外に住んでいる日本人が周囲の日本人以外の人に、「こうすれば、日本で公衆WiFiが使えるよ。でも、君の端末を日本で電源入れると、法律違反で犯罪だから、こっそり使ってね。」って言えっていうの?

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さて、以下のことも「ディジタル井戸端」では話題になっているようですが、筆者は今回の問題としてはまったく取り上げてはいませんので、ご理解ください。

● 「海外ではWiFiのパスワード(WEPキー)を入力しなくても公衆WiFiにアクセスできる。日本は殆どでパスワードが必要。だから(?)日本は遅れている。(?)」という主張。

「WiFi接続のためのパスワード(WEPキー)が設定されていれば安全」と言う訳ではないと思いますよ。
パスワードが有ったって、そのパスワードを頻繁に変更していない喫茶店やホテル(例)のパスワードなんて、パスワードの有る意味が無いですよね。
だって、そのパスワードを誰かがネットで公開したら、意味無いじゃん。
特に、「情報を共有する」ことに関しては日本人と比べて意識レベルの低い中国人が、著名な場所に頻繁に訪問するようになって、そこに公衆WiFiが提供されていたら、そのパスワードはじきに中国のサイトに公開されると思ったほうが良いでしょう。iPhoneやアンドロイドのアプリだって家族でもなんでもない、関係も無い第三者がIDを共有して、アプリを共有するような人達がいる世界だからね。

で、そのパスワード(WEPキー)を定期的に変更しようと思ったら、運用が手間でコストがかかります。

どうせ無料で提供しているのに、なぜそこまで運用コストを掛けないといけないのか・・・
どうせ、無料で提供しているWiFiじゃあないですか。
無料サービスに、有料運用コストを掛けては、赤字でしょう。
だから、合理的でセルフサービスの好きなアメリカでは、セルフサービスで繋げられるような公衆WiFiにしているだけです。
フロントやカウンターでスタッフにWEPキーを聞かなくても、「セルフでやれや!」ってのが、合理主義的経済観。
「フロントやカウンターのスタッフの人件費はタダだ。」と思っている国と、「フロントやカウンターのスタッフが客に無料WiFiのパスワードを教える時間があるくらいなら、彼らにもっと大事な仕事をさせろ。」と思うのが、アメリカの経営者の考え方。(ヨーロッパは行ったことが無いので、知らない。)

どっちが遅れているとか、進んでいるとか、の違いではなく、価値観の違いでしょう。

● 無料公衆WiFiは情報漏洩しやすく、危険。

無料公衆WiFiへのアクセスが危険かどうかは、使う人が決めればよいこと。また、使い方にもよりますよね。
知らない国へ訪問して、何を知りたいかというと、殆どが、
 - 自分は、今、どこにいるか
 - これから行くところへは、どうやって行ったら良いか
 - 今日のお天気、明日以降のお天気は?
 - どこに行ったら、何がある?
 - 今夜は、何を食べよう?
 - これを言うには、現地語でどう言えば良い?
この程度の情報検索で「無料WiFiアクセスが危険かどうか」ということは考えない旅行者が普通でしょうし、考える人はVPNを使えば良いし、それでも気になる人はポケットWiFiをレンタルすれば良い。選択肢は複数あるので、あとは使う側の責任。

ともかくも、今回のサービスは「訪日客に、何らかの方法で無料公衆WiFiへのアクセスを提供する」ことが前提なので、それ以前に議論されていなければならない「無料公衆WiFiは危険かどうか」は、利用者が判断すべきことであり、「認証の方法」の話題とは別問題。

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● もうひとつ、日本に住んでいる人が殆ど問題に直面したことが無いこと・・・

2006年4月に施行された、俗に言う「携帯電話不正利用防止法」のおかげで、日本国内に居所(住民票)の無い海外在住日本人、および、日本国内に外国人登録をしていない外国人は、通話機能の付いたSIMは、購入できません。
したがって、短期訪問の外国人が日本で「現地SIMを買う」ということは、難しいのです。データ通信専用SIMはこの法律の適用外ですが、その違いの判らない訪日外国人は、一度SIMの販売を断られたら、「データ通信SIMだけなら買えるかも?」という頭の切り替えは、普通は出来ないと思いますよ。

この辺も、外国人や海外在住日本人が、日本の通信事情(一般)を理解できない原因のひとつです。

したがって、外国人や海外在住日本人が日本でネット通信がしやすくなる状況になるのは、原則的に大歓迎なんです。

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でも、提供する自治体やキャリア(WiFiプロバイダー)だけで計画するのではなく、海外在住者や外国人も企画段階でメンバーに入れて、意見を聞いて、安心して(電波通信法に違反することなく)、旅行者として便利に使えるようなサービスを提供して欲しいです。



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