ドイツ・テレコムCEO、「SprintのT-Mobile US買収が規制当局に承認されるとは思えない。」
T-Mobile USの67%の株を所有しているドイツ・テレコム、そのCEOが本日、ドイツ・テレコムの四半期業績発表後のコンフェレンスコールで、「SprintのT-Mobile US買収」に関する質問を受け、「アメリカ規制当局がこの買収を認めることは、疑わしい」との認識を持っていることを明らかにしました。
「したがって、この現状の中で、現株主に対して、T-Mobile USの価値を高めるために、いかに努力をしていかないといけないかを考える必要がある。」と延べ、T-Mobile USの事業を独自に強化していく計画であることを示唆しています。
さらに、T-Mobileはこれまで利益を犠牲にして売り上げ(加入者)を伸ばす努力をしてきましたが、今後は利益とのバランスを考えた成長を目指さなければならないことを指摘し、アナリスト予測では四半期成長率が第2四半期13%から、第3四半期8%に鈍化して来ると、予想されています。
T-Mobile USAはMetroPCSと2013年5月1日に合併しましたが、その際に、合併後のT-Mobile USの経営を安定化するために、ドイツ・テレコムは合併後1年半は、同社の所有するT-Mobile US株を切り売りしないことを約束しています。その期限が2014年10月末で切れますが、11月以降はドイツ・テレコムによるT-Mobile US株の部分的売却も有りうる、とも述べています。
【Bloomberg】T-Mobile Owner Voices Doubt U.S. Deal Would Be Approved – 2014年5月8日
要するに、いくらソフトバンク社長の孫社長がT-Mobile USにラブコールを送っても、T-Mobile US側でソフトバンク/Sprintの方を向いてくれる可能性が、時間と共に低くなっているということです。
最近の噂によれば、Sprintは状況次第で来月6月か7月にもT-Mobile US買収提案を出せるように主要銀行に接触し、その資金準備をしているということです。
孫正義氏、T-Mobile US買収を諦めていない。次の行動は、2014年6月か7月? – 2014年5月1日
また、携帯電話事業だけでなく、固定電話事業、光回線によるTV配信事業を持っているAT&Tが、衛星放送第1位のDirecTVを買収する交渉に入っている、というニュースを受けて、衛星放送第1位のDish Networkは、「もし、SprintがT-Mobile US買収に失敗すれば、DishがT-Mobile USを買収または合併するのは、業界の動きから言っても理にかなっている」とほのめかしました。
【Bloomberg】Dish Is Ready to Pounce on T-Mobile as DirecTV Too Pricey – 2014年5月8日
Dish CEOは、「自社の資金調達力はソフトバンクほど強くない」と認め、「T-Mobile US買収劇でSprintと買収額の吊り上げで競争すれば、負けるであろう」とした上で、「しかし、もし、SprintによるT-Mobile US買収が規制当局に反対された場合には、業界再編の動きの中で、衛星放送のDISHはワイヤレス通信のT-Mobile USと戦略的に一体となって事業を行うことに興味がある」として、T-Mobile USの買収行動に出ることを否定していません。
Dish NetworkはかつてDirecTVの買収を考えていたことがありますが、現在、AT&Tに買収されようとしているDirecTVは価格的に高く、手が出ないと話しています。