ソフトバンク孫社長が2014年3月11日ワシントンDCの商工会議所会合で、Sprint/T-Mobile合併の必要性をアピール


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さて、ソフトバンク/SprintのT-Mobile US買収劇の次のステップは・・・と気になり、そろそろ忘れかけた人が多いか、「当分ダメか」と諦めかけた人が多くなっているかもしれない時期ですが、・・・

FCC(連邦通信局)やDOJ(司法省)から隠密ミーティングでも「No」を言い渡され、公の場でも「(今は)アメリカの携帯キャリアは4社あることが望ましい。」と、買収反対の声明を出されたソフトバンクの孫代表ですが、今朝のWall Street Jopurnalのニュースによると、2014年3月11日にワシントンDCの商工会議所(Chamber of Commerce)の会合で孫氏がプレゼンテーションを行い、アメリカの携帯業界の合併・統合の必要性を主張するようです。

政府認可機関への説得が思うように行かなかったので、企業や政治家を集めた集会でアピールし、SprintによるT-Mobile US買収賛成への世論を作ろうとしているようです。
【WSJ】Sprint Chairman Seeks U.S. Public Support on T-Mobile Deal – 2014年3月4日

孫氏はSprint買収前も直後も、業界に詳しいコンサルタントやロビーストを雇っていると思うので、専門家ではない筆者が自分の意見を口出しするようなことでは無いと思います。

しかし、ソフトバンクがSprintを買収する際にはDOJおよびFCCに買収後の事業計画を出しているはずで、その中には年間80億ドル(約8000億円)をSprintに2年間投資し、Sprintのインフラ(LTE)整備をすることが約束されているそうです。

それなのに、Sprint買収後になって「いやあ、買収後にSprint内部を精査したら、1兆60000億円(8000億円x2年)の投資ではSprintを建て直すのは困難。だから、T-Mobile USも買収させてくれ。」ってのは、事業家や政治家には納得できないと思うんですよね。「そんないい加減な事業計画でSprintを買収したの?だったら、T-Mobile USを更に買収したって、結果は同じなんでは・・・」と。
ソフトバンクの海外進出のきっかけとなる金の卵だと思ったSprintが、買収後に蓋を開けてみたら「負けクジだった。だから、ルールを変えて(T-Mobile USの買収を認めて)くれ。」と言っても、アメリカのフェアネス(公平ルール)の感覚では、世間は許さないですよ。レースが始まってからは、ルールは変更できません。まずは今のレースを完走するか、少なくともゴールが見えてきたときに、「次のレースでは、(これまでの努力を評価してくれて)こういうルールに変えてくれ。」というなら、話は違いますが。

筆者は別にSprint/T-Mobile USがいつか合併するのを反対しているんではないですよ。
ただ、時期が早すぎる、と言っているだけです。

Sprint買収の際に提出した事業計画も達成できないソフトバンクが、「(1年前に提出した買収後の事業計画が達成できないので、)T-Mobile USも買収させてくれ。」って、「じゃあ、最初の事業計画は何だったの?それほど貴殿には経営能力が無いの?」って反感を食うでしょう。
ともかく、今は、Sprint買収時の事業計画を黙って実行し、Sprintが成果を出せるようにすべきでしょう。

いや、孫氏はそれも判っているとは思うんですが、それでもT-Mobile US買収をあせらなければならない理由が経営的にあるのでしょうか?
たとえば、1兆6000億円を2年でSprintに投資する金をSprint以外の事業で捻出することが、困難になってきたとか・・・

CNBCなどの経済専門TV番組のSprint/T-Mobile US買収を論議しているセグメントを見ていると、「いったい、マサヨシ・ソンって、ナニサマなんだ?」とアナウンサーが発言している場面もあります。(アナリストは情報を良く調べているので、悪口はめったに口にしませんが・・・)
一般世論としては、それだけネガティブなイメージも一部で出はじめていることを、「孫氏個人イメージPRチーム」は意識しないと、世論も孫氏の味方にはならないでしょう。

ついでながら、今日のWall Street Jopurnalに記事には、孫氏のコメントとして、
“Every time I make a business trip to the U.S., I am reminded how terrible connections are there,”
(「毎回アメリカへ出張すると、アメリカの携帯接続が最悪なのを思い知らされる。」)
と言っているそうですが、それは4社中で電波最悪のSprint回線を使っているからだと思いますよ。筆者の息子も昨年までシリコンバレーに住んでいましたが、Sprintの回線の悪さに耐えかねて、AT&Tに変えました。今はイースト・ベイに住んでいますが、その辺(バークレー/オークランド)はSprintのLTEがあるらしいですが、いまだにサンフランシスコからシリコンバレーはSprintのLTEはサービス開始されていませんからね。

ついでに「The U.S. has one of the world’s highest mobile fees(アメリカは世界でもモバイル料金が高い), and the principles of competition aren’t working(キャリア間の(価格)競争が機能していない。)」とも言っているそうですが、T-Mobile USのアグレッシブな低価格路線と、それに追随しているAT&TとVerizonの現象は、認識している?
そして、少なくともアメリカでは、長電話でも通話時間を気にせず、固定電話へでも携帯電話へでも、他社の携帯電話へでも、どんな時間帯でも何曜日でも、国内電話は定額で通話し放題が主流になっていますよ。

筆者の意見としては、孫氏がもっとちゃんとした「業界およびPRコンサルタント」を雇い、その意見を聞きながら行動すれば、解決する問題だと思うのですが、そういうところに金を使っていないか、誰の意見も聞かずに一人で突っ走っているかの、どっちかなんでしょうね。



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