孫氏の「アメリカのインターネットは遅い」「T-Mobileを買収させてくれれば、より速いインターネットをより安く提供する」発言が、メディアにdisられている件
以前も書きましたが、筆者がこのようにSprint/T-Mobile US合併(買収)に関する情報を頻繁に流すのは、日本国内の情報が非常に偏った情報ばかりだからです。
いろいろな情報を読み、あとはご自分でご判断ください。
筆者は基本的には2~3年後には、そのときにまだ両社が独立系携帯会社として運営されていれば、SprintとT-Mobile USは合併することが規制当局にも許可されるであろう、と考えています。
したがって、この2社の合併(買収)に根本的には反対するものではありません。
しかし、今は(合併は)無理でしょう。
※ 業界淘汰(境界を隣接する業界を含む)が加速的に進んでおり、もし、今回SprintがT-Mobile US買収を諦めた場合、あるいは、アメリカ規制当局の反対にあって失敗に終わった場合、2~3年後にT-Mobile USが独立携帯会社として存続しているかどうかは、まったく疑問になってきました。
——–
さて、ソフトバンクのCEOでSprintの会長の孫 正義氏は2014年3月11日ワシントンDCで、また、2日前のカリフォルニア州Rancho Palos VerdesでのRe/code Code Conferenceでのインタビューで、「アメリカのインターネットは遅い」、「T-Mobileを買収させてくれれば、より速いインターネットをより安く提供する」(Re/codeコンフェレンスでは直接T-Mobileの名を明言していませんが・・・)と主張し、SprintとT-Mobile USが合併することにより経費削減が出来て、技術革新のための開発や設備投資に投資する余裕が出来、「アメリカ国民により速いインターネット接続を、より安く提供できる」ことを主張の前面に出し、世論で「SprintによるT-Mobile USの買収」を認めさせようとしています。
しかし、既にいくつかのメディアはこれを否定し、反論しており、必ずしもアメリカ国内の業界関係者の共感は得られていません。
反論のポイントはいくつかあり、
● SprintがT-Mobile USと合併後は(それが可能だったとして・・・)、2社の使用している3G通信の通信方式が違うため、当分(1年~数年)は通信技術や設備の統合に年月と経費がかかり、孫氏が約束している「より速いインターネットをより安く提供する」は、すぐには達成できない。
● ここ2,3年のSprintの経営は「有言無実行、裏切られた約束」が多く、ユーザーはSprintを信用していない。まずは、信用回復が主要課題。(Sprintは金が無かったから約束を破らざるを得なかったのは仕方がないけど・・・だから、ソフトバンクに救世主になってもらわなければならなかったわけで。そこでソフトバンクの役割は、まず、Sprintの顧客に対して「金の心配は要らないよ。」という状況を見せないと、顧客は信用しない。「このままでは会社の規模が小さすぎて、SprintもT-Mobileも赤字だ。だから合併させろ。」って主張は、顧客無視の、投資家利己主義発言。)
● 孫氏は現在を基準にして「アメリカのインターネットは遅い」と言っているが、技術革新はどんどん進んでおり、孫氏が「今よりも速いインターネット」を達成したときには、他社はキャリアアグリゲーション技術などを使ってもっと速いインターネットを提供しているだろう。
● 携帯(Wireless)インターネットと、固定インターネットの速度や容量を比較するのは、意味が無い。今後、ビデオコンテンツへのアクセス(ダウンロード)が増えてくると、固定インターネットは月の使用量が250GB以上になると予想される。帯域の狭いワイヤレス通信で月にこれだけの容量を配信するのは、無理。 CATV配信会社であるComcastと競争するという発想自体が、無理。
● 2012年9月からカンザスシティーで開始されているGoogleファイバー1ギガビットサービスが、他の地域でも開始され、Google以外のCATV/光ファイバー配信会社もそれに対抗するために1ギガビット・インターネットサービスを開始し始めている。まだまだ加入できる地域は少ないとしても、技術革新が加速され、加入者の固定高速インターネットへの要求が高まっているため、ISPもその需要を満たそうという努力をしている。
● そもそも孫氏の「アメリカのインターネットは遅い。」という根拠が、間違った情報、古い情報や歪曲された情報に基づいており、正しくない情報で「危機感やネガティブ印象」を世論に与え、世論を煽動しようとしている。
当然、このような意見はFCCも調査して「Sprint/T-Mobile US合併提案」に(もし、それが提出されれば・・・)反論すると思われ、孫氏の主張は必ずしも彼の思惑通りにはキャンペーン効果を得ていない、という状態のようです。
【GIGAOM】Why you shouldn’t buy the miracle broadband network Softbank’s Masayoshi Son is selling – 2014年5月30日
【TheVerge】I love America, and I want to buy T-Mobile – 2014年5月29日
【TheMotleyFool】Here’s Why Sprint Communications Inc. Shouldn’t Buy T-Mobile – 2014年5月29日
【BGR】Sprint’s chairman doesn’t know why we tolerate our awful American ISPs – 2014年5月29日
ちなみに、我が家の今日現在のネット速度:
Comcast CATV (孫さんのシリコンバレーの「アメリカ」自宅のISPと同じ会社。孫さんは自宅では6Mbps程度しか出なくて、「遅い」と言っているようですが・・・):
LANケーブル経由、デスクトップPCで、ダウンロードが57Mbps、アップロードが11Mbps。
T-Mobile US LTE:
ダウンロードが20Mbps、アップロードが1-3Mbps。
Verizon LTE:
ダウンロードが11Mbps、アップロードが1-3Mbps。
AT&T LTE:
ダウンロードが5~7Mbps、アップロードが1-3Mbps。
Sprint 3G (自宅周辺ではSprint LTEはまだ始まっていない。):
ダウンロードが1~2Mbps、アップロードが13Mbps。
いつも有用な情報ありがとうございます。
「アメリカのインターネットは遅い」の遅いは、ダウンロード速度の事か反応速度の事を指しているのかが興味あります。
ダウンロード速度であれば日本とそれほど変わらないと思います。周囲環境、通信技術により違いがありますが、あまり違いがあるようには思えません。
年に数回程度しか日本に行くことはありませんが、反応に関しては日本のほうが早いように感じます。国土が小さいためにサーバーへの距離が短いという優位性があるからなのでしょうか。CDNを使ったり補えることはできると思いますが、私は日本のほうがブラウジング等の反応速度は日本のほうが早いと感じます。3GとLTEのLatencyの違いもあるようですが、この反応速度に関して他に何が寄与しているのかとても興味があります。
(別トピックの話ではありますが)さて、NYCでVerizonの利用者ですが、今のところXLTEの20M+20Mはまだのようです。Field Test隠しコマンドで確認しているのですがBand 4をほぼいつも掴んでいますが今のところ20M以上20M+20M若しくは40Mという表示は見てません。先ほどSpeedTest.netで試したところ30M down / 5M up程度でした。キャリアのコンフィグアップデートは最近入れた覚えが無いのでXLTE自体が使えていないのかもしれません。
管理人 返信:
2014年5月31日 12:21 PM
アメリカはやっとLTEの基盤が(Sprintを除いて)出来たところで、次のステップに(Sprintを除いて)各社移行しています。
最初のLTEはVerizonもAT&Tも10MHz+10MHzの限られた周波数帯域しか与えられず、予想以上に急激にLTE加入者が増えたため回線混雑になってLatencyも遅くなっているのが状況でしょう。もちろん、基地局と基地局の間隔もLatencyに寄与しているかもしれませんが。
これから第2の周波数でLTEを開始し、帯域を20MHz+20MHzに増やしたり、Small Cellを増やしたり、その他の技術でLatencyも短くなると思います。
日本とアメリカのエンジニアリングの態度の違いは、日本は最初っから大きくドンと設置、アメリカは段階的に設置、だと思いますね。
したがって、アメリカはこれからまだまだ改善されると思いますよ。
NYCのBand 4はまだ20MHz+20MHzではなくて、10MHz+10MHzなんでしょうか。
VerizonはBand 4ライセンスを持っているところは全て20MHz+20MHzだと推測していたんですが、地域によっては10MHz+10MHzなんでしょうか?それとも、ただ単に最初は10MHz+10MHzで初めて、あとで20MHz+20MHzに広げるんでしょうかね。
NYCは今回のXLTE発表前の昨年後半から回線混雑回避のためにAWS Band 4は開始されていますからね、他とは違うんでしょうかね。
XLTEはキャリア・アグリゲーションではないので、Carrier Profile Upgradeは不要だと思いますよ。
TMOが親会社からMBOして独立し、5位以下のキャリアをどんどん買収していくというような攻めの戦略をしてくれると面白いなあと思いますが、実際のところ5位以下だと全国レベルのキャリアが少ないので難しいのでしょうか?
管理人 返信:
2014年5月31日 11:52 AM
5位以下で一番大きなのがU.S. Cellularで、加入者数430万人。3GはCDMA2000通信方式ですが、AWS Band4と700MHz Band 12でLTEを開始しているので、VerizonかT-Mobile USに買収されるかな・・・と思ったのですが。
昨年シカゴとセントルイス(だったかな)の市場と電波使用権をSprintに売って、その売却利益で現在LTE拡張しています。他の加入者数400万程度の携帯会社がすべて買収されたのにどういう経営判断なのか、良くわかんないですね。
6位以下は加入者数が100万人以下。Cincinnati Bellのように設備投資が出来ないとして携帯事業を廃業する会社も出てきています。
「Verizonが地域キャリアのCincinnati Bellの携帯電波使用権全てを買収。」
https://blogfromamerica.com/wp/?p=21296
あとは、Rural Programで4大キャリア(主にVerizon,Sprint)から電波を借りて運営している超田舎/僻地地域とか、アラスカのようにだだっ広くて人口密度の低い地域。たぶん、そういうところは連邦政府の補助もあるのかと思います。
どちらにしても、これらを全部買収しても600万回線ぐらいですね。今現在なら600万回線あればSprintとほぼ同数にはなりますが。
それよりは、T-MobileがDISH NetworkかComcastかChina MobileかGoogleかMicrosoftに買収されたほうが面白い・・・と最近思えてきました。
今朝からロイターなどが「買収に大筋合意」の記事が掲載され始めましたね。
政府の認可は不透明ですが・・・
本日ロボット事業への参入の発表会があるそうなので何か発言があるかもしれませんね。
管理人 返信:
2014年6月5日 10:45 AM
早合点の日本語記事が多いので、ご注意ください。
皆さん、ロイターの第一ソースを、オリジナルの英文で読んでいないことが多いので。