アメリカの医療通訳士の資格と、その仕事


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日本でも近年、医療通訳士が制度化されてきましたが、アメリカの医療通訳士の資格について、思ったことを書いてみたいと思います。

まず、医療通訳士が必要になった背景ですが・・・

■ なぜアメリカで医療通訳士が必要か?

(1)Title VI of Civil Rights Act of 1964 サービスへのアクセスの平等
1964年7月2日に制定されたアメリカの1964年公民権法(Civil Rights Act of 1964)、第6章(Title VI)、第601節に、以下の文章が明記されています。
“No person in the United States shall on the ground of race, color or national origin, be excluded from participation in, be denied the benefits of, or be subjected to discrimination under any program or activity receiving Federal financial assistance.”
アメリカ国内に住んでいる人は、人種、皮膚の色、出身国に差別されずに、連邦政府の補助を受けているプログラムや活動を受ける際に、差別を受けてはならない。
※ 「言葉の壁も、差別の対象になってはならない」というのが、連邦政府の見解です。

(2)大統領執行命令 13166(2000年) 言語アクセスの平等
2000年、当時のクリントン大統領は大統領執行命令(Presidential Executive Order) 13166を発令し、連邦政府、および、連邦政府の補助を受けている機関が、英語を母国語とせず、コミュニケーションに不自由のある人(Limited English Proficiency)に対しても、同等のサービスが出来るよう、それぞれの機関が通訳サービスなどを向上するよう伝達しています。
※ 一定の基準で通訳サービスを提供していない機関は、連邦補助金を受けられなくなります。

(3)1996年発令のHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)による医療従事者の患者個人情報保護の義務化と、刑罰に関する規定
患者の個人情報の保護のための法律、HIPAA、の施行により、病院等が個人情報漏洩を防ぐため、また、個人情報漏洩に関した訴訟で訴えられるのを防ぐため、病院内で活動する通訳者に対しても、この件に関しては医療従事者と同等の知識を求めている。

(4)Informed Consent (正しい情報を得た(伝えられた)上での合意)の徹底のため
訴訟社会であるアメリカの医療サービス(治療・手術)は患者のInformed Consent (正しい情報を得た(伝えられた)上での合意)を必要とし、それが無いとあとで病院が患者から訴えられる可能性があります。「知らないで手術された。」「知らない部位を手術された。」「治療の副作用や、手術が失敗した場合の結果を、術前に徹底的に教えてもらわなかった。」ということで、病院が患者からあとで訴えられて、多額の賠償金支払い命令を受けることがあります。その訴訟の可能性を避けるために、アメリカの病院やお医者さんは患者に事前に充分に説明をし、患者の同意した治療や手術しか行いません。患者が言葉の障壁のために事前に充分に情報提供を受けていなかった、という言い訳をさせないために、病院側は自分たちを守るために通訳を付ける事があります。

以上の理由により、アメリカで
 - 連邦政府の援助を受けている(つまり、研究費補助だけでなく、MedicareやMedicaidなどの連邦健康保険制度からの経済的援助を受けている患者を少なくとも一人でも検診受付している)病院は、全ての患者に対して、患者が希望すれば、あるいは、病院が必要と認めれば、「通訳費用は病院の負担で」通訳を患者に提供します。

※ Medicare、Medicaidなどの低所得者医療補助サービスを受けていない個人のドクター・オフィスなどでは、医療機関側が(患者に対して)無料で通訳を提供する必要は、ありません。
※ ハワイ州などの一部の州では、病院が患者に提供する通訳経費を州政府が払い戻す制度の州もあるようです。

■ 家族や親戚・知人が通訳を行っても良いか?

家族・親戚・知人は
(1)HIPAAの個人情報保護の法律を知らない
(2)中立的通訳が出来ず、患者に偏ったり庇う通訳になりがち
という理由から、病院等では家族・親族による通訳行為は「正式な通訳」とはみなされません。ただし、家族・親族が診察などに患者と同席し、患者本人と一緒になって病気や治療に関して考えることは「Informed Consent」の行動の一部であり、退院後に患者さんと一緒に住んで介護する家族の生活にも関わってくるので、診察などに家族が同席することは奨励されています。

■ アメリカに医療通訳士の資格は、存在するのか?

アメリカにおいて「医療通訳士」という公的資格は、ありません。

また、つい数年前までは業界自主団体の資格もまだ無く、最初の節で書いた(1)~(4)の内容を含む40時間程度の教育トレーニングを受けることで、「医療通訳を提供する上での最低の知識を知っている」と思われていました。その代表的な民間の「40時間の医療通訳トレーニング」には「Bridging The Gap」というトレーニングがあり、ここの教材を使って、全米各地の通訳/セミナー機関が「医療通訳者コース」を提供しています。このコースの終了証書が、「医療通訳をする上での最低限の教育を受けたよう~」という証明になります。
病院等は、このコースを終了した人を医療通訳者として採用する義務はありませんが、自分のところでHIPAAやInformed Consentに関して教育したり、数多くの言語の種類がある中で、それぞれの言語の通訳能力を評価するのは面倒ですから、これらのコースを既に終了している人を優先して雇うことが多いです。

近年になってアメリカの2つの全米的非営利機関が医療通訳認定制度を開始しています。
● CCHI(Certified Commission for Healthcare Interpreters)
● CMI(National Board of Certification for Medical Interpreters)
これらは英語のみの筆記試験と、英語とターゲット言語による口頭の試験とを行い、それによって「医療通訳者」として「一定基準を満たしている」という証明書が与えられます。(認定)
ただし、現在、口答試験が用意されているのは、スペイン語、中国語などの数ヶ国語だけです。日本語に関しては現在は口答試験は無くて、英語による筆記試験を一定得点でパスすれば、「準資格」に相当する「core」「associate」などの資格が与えられます。
「Bridging the Gap」医療通訳トレーニングと同じく、病院側としてはこの資格を持っている人を雇う義務はありませんが、自分のところで必要最低限を教育するのは時間の無駄であり、体制が出来ていないので、既にこれらの資格試験をパスした人を指名することが多いです。

現在、日本語などの「必要とされる機会」の少ない言語を通訳している医療通訳者には、「Bridging The Gap」のような最低40時間の医療通訳トレーニングを受講済みの人は多いと思いますが、CCHI/CMIの全米認定制度(公的ではないことにご注意)を受けている人はまだ少ないです。その理由は、
 - これらの試験を受けるのに受験料として約$200必要であること、
 - 受験するためにはもう一度「Bridging The Gap」のテキストの内容を復習し直さないといけないこと、
 - それだけ時間と金を掛けても、それに見合う報酬がすぐに回収されないこと
です。また、学習内容的には「Bridging The Gap」の履修内容でCCHIおよびCMIの試験はパスするだけのレベルなので、特にCCHI/CMIの資格は(今のところ)ある必要は無い、と筆者は考えています。しかし、これから医療通訳トレーニングを受講する人は、終了したらすぐにCCHIやCMIの資格試験に応募し、受験することをお勧めします。勉強を二度繰り返す必要が無いので・・・

なお、CCHIおよびCMIの資格は、資格取得後に4年ごとに更新手続きが必要です。更新の条件は、医療通訳の実務経験が毎年(または2年ごとの計が)最低時間達していることが必要なほか、医療通訳に関する生涯教育の最低時間の受講も必要とされます。この条件が満たされていないと、4年毎の資格更新が出来ません。

※ 需要の多い「英語<>スペイン語」の通訳者の場合は、病院(裁判所でもそうですが・・・)のフルタイム職員として雇われる場合があります。この場合には、採用条件としてCCHI/CMIの資格が必須か、有利です。

■ 医療通訳士になるための条件

 - 高校卒業していること(卒業証書などの提出が必須ではありませんが、・・・)
 - 英語と、通訳するターゲット言語の、会話レベルが、証明されている。(英語と、自国語の、それぞれの会話による、評価テストを受けます。通訳能力では有りません。それぞれの言語の会話能力です。)(試験料約$100)
 - - 語学能力評価専門の第三者機関による英語のインタビュー、および、自国語のインタビューを、電話で受けます。
 - 40時間以上の医療通訳トレーニングを受講する(受講料約$500)
 - - アメリカの医療関連の法律、歴史、通訳実習、医学単語の学習、が含まれます。
 - - 以前は40時間参加するだけで修了証書を貰えましたが、現在は「Bridging The Gap」コースの場合には最終日に1時間50問の試験があり、その試験に70%以上の高得点を得ないと修了証書が貰えなくなりました。

以上がアメリカで医療通訳者として通訳行為を行うための最低限の条件です。この条件を満たした後、CCHIまたはCMIに申し込み、審査(約1ヶ月)を受け後の6ヶ月以内に全米テストセンター(TOEFLなどのテストも行っているような場所)でコンピュータベースのCCHI/CMIテストを受験し、合格すれば「準」資格認定を受けることが出来ます。(日本語に関しては口頭試験がまだ出来ていないので、「正」資格認定ではなく、「準」資格認定しか受けられません。)

なお、病院や通訳エージェンシーによっては、以下の情報を要求することがあります。
 - バックグラウンド・チェック(犯罪歴)
 - 予防接種リスト、または、それらの病気にかかっていないことの証明
 - 毎年、インフルエンザ予防接種したことの証明
 - アルコール/ドラッグ検査
 - 車の保険に加入していることの証明(自宅から病院などに出向いて出張通訳する場合)

電話通訳のみの場合には、患者さんと物理的に接することはなく、誤って患者さんに自分の持っている持病を感染することはないので、最後の4つは不要です。

■ 医療通訳士になったら、仕事は増えるか? 仕事は勝手に来るか?

先にも書いたように、アメリカでもっともニーズの多いスペイン語(と英語)の通訳者は、各州の裁判所や大きな病院、特に、低所得者の患者も多く受け入れている、地元の「公的」病院では、病院職員としてフルタイムの通訳者が雇用されているところがあります。この人の役割は、現場で毎日「英語<>スペイン語」の通訳を自分が実際に行うだけでなく、他の言語の通訳者が必要になった場合にその人を手配するのも仕事の一部であったりします。

スペイン語以外の言語では、病院側としては毎日必要ではないので、必要に応じて外部の医療通訳派遣会社に連絡して派遣してもらうことがほとんどです。
この場合、病院は、言語ごとにいちいち通訳者個人をデータベース化して、そのたびにコンタクトするのは面倒なので、出入りの専門「医療通訳派遣会社(通訳エージェント)」だけを決め、そこに通訳が必要な日時と言語を伝え、あとはそのエージェントに全てを任せることが多いです。通訳者が病院を訪問する必要のある場合は、時給幾らでエージェントから払ってもらいます。

また、経費削減のため、病院側は必要なときに電話通訳を呼ぶこともあります。
電話通訳では、病院は契約している「医療通訳電話通訳サービスエージェント」に電話し、エージェントは病院は電話を受けたら、同社に登録しているその言語の通訳の自宅に電話し、時には複数の通訳者に電話し、最初につながった通訳者と三者コールで通訳を行います。通訳者は在宅勤務で、スタンバイの時給幾ら、または、通訳した分数で1分幾ら、で支払われます。

病院によっては、電話通訳一社と、派遣(オンサイト)通訳(最低)一社と契約していることが多いです。電話で済むことは電話で、緊急を要する場合で通訳と前もって日時の事前取り決めが出来ない場合には電話で、そして、手術や診察でも実際にその場で通訳を使う方が良い場合にはオンサイトで通訳する、と決めているようです。

したがって、日英の医療通訳士になったからといって、そのまま個人で活動してもそれだけで仕事は増えないし、それだけでは通訳として食べてはいけません。

医療通訳の仕事を増やすためには、医療電話通訳専門の会社に登録するか、どこの病院がどの通訳エージェントと取引しているかを確かめ、その通訳エージェントに履歴書を送ります。

■ 医療通訳士に要求されること

(1)通訳するときには、「First Person(一人称)」で通訳する。
つまり、患者が「私は今日は熱が39度ある。」と言ったら、通訳者はお医者さんに「I have 39-degree fever today.」と言う。「She said she has 39-degree fever today.」と言うのは、間違い。
これは、日本語の場合には非常に難しいです。なぜなら、日本語の文章では主語が無いことが多いからです。
例えばあるとき、電話通訳をしていて、医者と大人の女性が話していて、
医者:「Would you ask her how much the temperature she had this morning?」
私(通訳):「今朝の体温は何度でしたか?」
日本人の女性:「39度でした。」
私(通訳):「My temperature was 39 degrees celsius.」
その後、しばらく(数分後)会話を続けていて、どうやら電話の向こうの診察室には3人居るらしいことがわかりました。そして、実際の患者は8歳ぐらいの女の子だったのです。したがって、上の会話の中での「日本人の女性」は、実は、患者のお母さんだったのですね。私(通訳)は「Her temperature was 39 degrees celsius.」と言うべきだったのです。

なお、通訳者は通訳する言葉は「一人称」で話す、というのは、アメリカの通訳の標準規格です。これが出来ていないと、真っ先に「減点」対象になります。

(2)両者の会話の「意味」を、正しく通訳する。

(3)相手の言ったことを、省略したり、短縮してはいけない。

(4)相手の言った事に、余計な言葉を追加してはいけない。

(5)通訳者の私見を加えてはいけない。

(6)秘密を守る。他言しない。書いたメモなども記録が残らないように(病院等の規則にしたがって)抹消する。

(7)患者の立場を考え、患者の見方になって、患者のためになる行動を取る。
よくあることは、日本ではまだまだInformed Consentがアメリカほど徹底していないため、「患者はお医者さんの言うとおりにする」と思っている人も多いので、お医者さんに何か言われたときに、次に何をどう質問したらよいかわからない日本の方が多いように思われます。したがって、気を利かして変わりに聞いてやるか、「こういうことを聞いた方が良いのでは?」と患者さん側に助言することもあります。
そして、患者さんやその家族がアメリカの通常の医療手順を知らない場合も多いので、それも助言してあげることもあります。たとえば、手術後、いつごろ家族は患者に会えるのか?たとえば、「普通、手術直後は患者さんは回復室に移されて麻酔が覚めるのを待ち、それから病室に移って初めて家族は面会が許されますが、ちょっと聞いてみましょうね?」という感じですね。

(8)医学用語をわかっているか、調べる手段を知っている。
大体、自分が「医療通訳(者)だ」と言うと、一番最初に言われるのは「医学専門用語を知っているんですよね?」ですが、はっきり言って、そんなことはありません!
専門用語を一週間くらいの研修で詰め込まれても、毎日使わなかったら忘れますよ。
まあ、そりゃあ、何度もやっていれば、繰り返し使う言葉は記憶には残りますが・・・

私だっていまだに腎臓(Kidney)と肝臓(Liver)がどっちがどっちだか分からなくなることがあります。
「esophagus」なんて頻繁に使う言葉ではないので、それをお医者さんに言われてすぐに「食道」だなんて日本語は出てきませんよ。逆もしかりです。(一般に日->英のほうが難しいですが。)
今ではiPhoneやiPadが使えるので、通信さえ繋がっていればその場でオンライン辞書で調べられますけどね。でも、調べると、時間が掛かりますね。当事者間の会話が止まります。

通訳の場の回数が増えれば増えるほど、「こういう症状の場合には、お医者さんはこうするだろう。こういう検査はするだろう。こういう治療や手術をするだろう。」という予想が出来る場合は増えてきて、それによって次の文章や会話の通訳の心の準備が出来てきます。
でも、これまでに経験の無かった新しい症状や病気の場合もあるし、その場合には次の会話が予想できないので、今までに経験したことの無い「新しい場面」です。

通訳の仕事の面白い点の一つは、常に「新しいこと」が起こる、ことでもあります。

(9)ストレスに負けない
日英の通訳は、特に正確に内容を伝えようと思うと、難しいです。絶対に「完璧な通訳」は出来ないでしょうね。
しかし、だからと言って、いい加減に通訳は出来ません。

通訳の役割は、相手が言ったことを「正しく(accurately)、追加せず(add nothing)、省略せず(omit nothing)、意味を変えずに(change nothing)」伝えることですが、この鉄則に100%従って日英通訳することは難しいです。

よって、仕事が終わったあとに「あの時こう言えば良かった。」「あの時のあの訳は、間違っていた。こう言えば良かった。」と反省することが多いです。内容次第ですが、その日の夜、就寝した後でも、翌日まで気になることもあります。
その時は振り返ってみて、「次は同じ場面ではこう言おう。」と反省し、努力すること。
翻訳と違って、通訳は瞬間的に訳を考えなければならないし、辞書を引く時間もそんなに頻繁に許されません。したがって、決まり文句のような場面に対しては、訳も定型で頭の中に準備しておき、それを常に良くしていく努力を忘れないことでしょうか。

なお、上記(1)~(6)は法廷通訳者も同じです。しかし、法廷翻訳者は常に中立的立場でなければならず、片方の側に付くような言動は禁じられています。



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「アメリカの医療通訳士の資格と、その仕事」への4件のフィードバック

  1. 初めまして

    アメリカの医療通訳士のことを調べていて、こちらのブログにたどり着きました。
    認定試験を提供する機関2つ(CCHIとCMI)と、「Bridging The Gap」という40時間トレーニングプログラムが信頼できるのかよくわからなかったのですが、あなたのブログを読んで納得がゆきました。とても参考になりました。現在、アメリカでは日英医療通訳の需要が少ないのは残念ですが、老後まで終生取り組めそうな仕事かもしれないという印象を受けました。よく考えて、トレーニングを受けるかどうか決めようと思います。

    情報をありがとうございました。

    A Yoshida 返信:

    ここ2,3年で急速に大病院や大学病院は有資格医療通訳士を優先して使うことが進んでいますので、少なくとも「Bridging The Gap」の履修は有利です。ただし、年々、受講料が上がっていきますね。受講後にそれなりの仕事が無いと、金と時間をかけて受講するメリットが無いです。

    CCHIの日本人認定通訳者はまだ5州20人弱しかおらず、CMIは全米で一人しかいません。ということは、逆に言うとこれらの資格をとることは現状、それほど重要では無いということです。が、勉強するのは同じ内容なので、これから「Bridging The Gap」の講習を受ける人は、受けた直後にCCHIの資格に申し込み、記憶が新しいうちにテストを受けたほうが良いと思います。

    私はコロラドという環境下で、月に平均10件くらいの診療に通訳として呼ばれています。主な患者は軍人と結婚した日本人老婦人。その多くは、未亡人です。一般のクリニックも時々(月1-2回)ありますが、ほとんどが大学病院です。他にも電話通訳をしています。今日も電話通訳で、他に事情があって妊娠を続けられない人が中絶に来た時の通訳を1時間ほどしました。
    ※ 念のために書くと、締め切りという期日に追われることが嫌なので、翻訳は今はほとんどしていません。また、月に10-15日も外出していると、じっくり机に向かって翻訳作業をする時間も取れないので、1-2日で出来るような小さな翻訳以外の仕事を引き受けるのは、締め切りまでに提出できるという約束が出来ないので、実質無理です。

    私はもともと医療関係従事者でもありませんが、通訳は医療担当者と患者の間の会話を通訳するものなので、内容は患者に理解できなければならず、そんなに難しくは無く、経験を積めば「こういう症状や病状の場合には、こういう治療や検査が(アメリカでは)次に薦められる」というのがわかってきますので、話の流れは事前に推測できるようになります。薬の名前だけは、何度聞いても、コマーシャルにも出て来るような有名なもの以外は、覚えられませんね。今はスマホやPCを使えば、その場でわからない医薬用語も調べられるので、便利ですね。

    あと、通訳者になにか過失があった(例:通訳者による患者個人情報の露出や、誤訳による損害賠償、など)場合を考え、病院は(フルタイム職員としてのニーズがあるスペイン語通訳者以外は)通訳者と個人で契約することは少なく、ビジネス保険に加入している通訳エージェント(法人)とまとめて契約していることが多いので、医療通訳の仕事を探すときには、どこの病院がどこの通訳エージェントと契約しているかを知ることが必要です。ひとつの病院が複数の通訳エージェントと契約をしている場合があります。また、「Bridging The Gap」の講習を提供しているところが、実際にいくつかの病院と通訳者派遣契約を持っているところも、多いです。既にその通訳エージェントと契約している通訳者を個人的に知らない限り、前もってどの通訳エージェントがどこの病院と契約しているのかを知るのは難しいので、結果的に多くの通訳エージェントに履歴書を送って登録することが必要でしょう。

    Sasha 返信:

    Yoshida様

    連絡が遅れましてすみません。

    とてもわかりやすく詳細をご説明いただき、とてもありがたいです。

    BTG履修は勉強にはなるとのこと、年内に受講できるかどうか検討します。
    また、すぐに認定試験を受けるのがお勧めなのですね。肝に銘じておきます。

    たぶん、受講料はすぐには回収できないように思います。自己投資と思い、将来生かせたら良しとしたいです。

    コロラドで定期的に医療通訳のお仕事があるのは嬉しいですね。
    私は大都市から車で2時間の町に住んでいますが、日本人はほとんどみかけません。以前は日系企業があり、駐在員家族への通訳もあったそうですが、残念なことに今は企業が撤退してしまいました。

    先日、かかりつけのクリニックで日本語通訳有りとのビラを見つけ、どこのエージェントなのか聞いておきました。いろいろなエージェントに登録するのがお勧めなのですね。これからリサーチしてみます。

    私は他に、医学翻訳のボランティアもしています。件数は月一回と校正業務も少し担当しています。これも将来のためと思い勉強していますが、Yoshidaさんのお話を聞くと2足の草鞋は大変なのかなと思ったり、進路で迷いますね。

    貴重なお話をありがとうございました。

    今後ともよろしくお願いいたします。

    A Yoshida 返信:

    私が通訳で付いている患者さんの多くは、何十年も前にアメリカ人のご主人と結婚した日本人妻で、70歳代や80歳代。その中でも未亡人の人が多いです。もちろん、少ないですがもっと若い人もいますが。

    翻訳が主で、たまに通訳をする日本人は多くいます。
    通訳が主(1ヶ月の半分以上が通訳)だと、翻訳の締め切り日を守るのは難しいです。

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