5人メンバーのFCCは本日3つの重要議題を決議しましたが、その一つは既に報告している、AT&Tが今年(2014年)1月に「Sponsored Data」というサービスで提案している「コンテンツプロバイダーによる、インターネットの有料優先アクセス権を認める」提案。
FCC、ネット通信の有料優先アクセス提案を可決。一般公開コメント期間を経て、今年後半に最終投票。 – 2014年5月15日
あとの2つは周波数に関するルールで、一つは
● 日本では所謂「プラチナバンド」と呼ばれていて、ビル内伝達や、郊外での長距離伝達に有効な、1GHz未満の低周波数の入札条件の規制。
「この周波数帯で既に1/3以上の帯域を所有しているキャリアは、新しい低周波周波数の入札が開催された場合に、入札に参加出来ない」という規制です。
これにより、AT&TとVerizonは既に700MHz帯域でLTEサービスを開始しており、800/850MHz帯域もそれぞれ2G/3Gで使用しいているため、両社合計で2/3以上の「1GHz未満帯域」を所有しており、2015年半ばに開催予定の600MHz帯域の入札には参加できなくなります。
FCCの本日最後の投票は、2GHz以上の高周波数を”Spectrum Screen”(キャリアの保有周波数帯域)に追加するかどうかの投票でした。
既に記事で書いているように、
SprintのT-Mobile US買収計画に、更なる壁が立ちはだかる – 2014年4月26日
これが可決すると、SprintによるT-Mobile US買収が難しくなる要素が一つ増えることになります。
Sprintは昨年7月初めにWiMAX/TD-LTE事業者のClearwireを完全買収したおかげで、2.5GHz Band 41の周波数帯域をほぼ独占的に持っており、これを”Spectrum Screen”に含めると、他社の1.5倍以上の周波数帯域を現在保有しています。
SprintがT-Mobile USを買収し、これにT-Mobile USの周波数が加わると、他社の2倍以上となり、「Sprintが周波数帯域を独占している」とみなされます。
それでもSprintがT-Mobile USの買収を強行する場合には、買収条件として、一部の周波数を他社に譲渡することがFCCから要求されるでしょう。
Sprintの周波数政策担当のKrevor氏は、「この決定を良くレビューし、Sprintの次のステップを決めたい。」とコメントしたそうです。
【RCR Wireless】Spectrum screen reset to Sprint’s dismay – 2014年5月15日
【FierceWireless】Can the FCC get the balance right with its spectrum rules? – 2014年5月15日
FCCは本日、先ほど、ネット通信の有料優先アクセスを認める提案を、3対2の民主党委員対共和党委員の党派に分かれて、可決しました。
これは、AT&Tが今年初め(2014年1月6日)にCES直前のAT&T Developer’s Conferenceで発表した「Sponsored Data」に対して、FCCがこのサービスを認めるかどうかで意見をまとめていた結果によるものです。
【GIGAOM】AT&T launches “Sponsored Data,” inviting content providers to pay consumers’ mobile data bills – 2014年1月6日
今回の投票後、FCCは120日間の一般コメント期間を設け、それに基づいて最終案をまとめ、再度、5人メンバーのFCC委員会で投票を行います。
最終提案の可決には過半数の投票が必要で、2人の共和党メンバーは反対すると予想されているため、FCC委員長(民主党)は、最終提案の内容で他の2人の民主党メンバーの同意が必要です。
本日の投票前に民主党メンバーの1人であるJessica Rosenworcel氏は、投票を延期するように意見を述べており、「この提案は、準備を急ぎ過ぎている。」と発言しています。
今回の提案はまだ最終ではなく、FCCが最終提案をプロポーズしても、それが法案として可決するまでには共和党多数の下院を含め、両議会の可決が必要と思われるので、まだまだ先のわからない状況です。
しかし、この「ネット通信の有料優先アクセス提案」が法案化すると、
● コンテンツプロバイダーが、通信回線業者(携帯、固定、光回線、CATV業者、など)にお金を払って、自社コンテンツを他のインターネットアクセスよりも高いネットアクセス優先度で配信することが出来る
ようになります。
例で示すと、
● NetFlixやHuluが、ゴールド優良会員に優先的にビデオを配信するために、携帯電話会社やケーブル会社にお金を払い、ゴールド優良会員へ先に配信するようにする。その間、回線が混雑している場合には、その他のユーザーのデータ通信が遅くなる。
と言うことです。
今回の「ネット通信の有料優先アクセス提案」に反対している人たちの意見は、「これを認めると、他のユーザーのネット通信が遅くなったり、VoLTEなどの音声通話や警察などの緊急電話も遅延し、影響が出る。」という点を取り上げています。電話会社は、「音声通信や緊急電話には、影響しない。」と表明しています。
参考リンク:
【Mashable】FCC on Net Neutrality: How It Happened – 2014年5月15日
【Reuters】Amid protests, FCC proposes new ‘net neutrality’ rules – 2014年5月15日
2週間前にポストしたように、
AT&Tが2014年5月23日からVoLTEを開始!? – 2014年5月2日
AT&TはVoLTEサービスを地域限定、機種限定で2014年5月23日に開始することを、本日公式発表しました。
【AT&T】AT&T Introduces High-Definition Voice in Initial Markets – 2014年5月15日
AT&TのHD VoiceサービスはVoLTEを使用し、従来の音声通話サービスに比べて約2倍の音域を転送し、周囲のノイズを取り除いて、クリアな通話が出来ます。
VoLTE HD Voiceサービスを受けるには、会話している両社がVoLTE HD Voice対応端末で、LTEに接続している必要があります。
開始当初はSamsung Galaxy S4 Mini端末のみがAT&T VoLTE HD Voiceの恩恵を受けられ、かつ、イリノイ州・インディアナ州・ミネソタ州・ウィスコンシン州の地域でのみ使用が可能です。
AT&Tは徐々にこの地域と機種を増やしていきます。
また、今年秋に発売されるiPhone 6ではVoLTEが標準搭載されるとも期待されています。
【注】
アメリカでは、当時は地域サービス限定のMetroPCSがT-Mobile USAと合併する前に2012年8月7日よりLG Connect 4Gアンドロイド携帯でVoLTEを開始しており、合併後(2013年5月1日)の現在でもMetroPCSの同機種のユーザー同士はVoLTE機能が使用できます。
また、T-Mobile USは昨年(2013年)4月からのiPhone 5発売以降、HD Voice機能をiPhone 5や、他のHD Voice機能対応のスマホで提供していますが、3G W-CDMA通信上で提供しています。
Sprintも2014年2月11日より地域限定(初期はフィラデルフィア、バルチモア)でHD Voiceを開始していますが、これも、CDMA2000通信上で提供しています。