スミソニアン国立博物館が、所蔵品の高品質画像を一般公開開始。初回は4万点。私的利用は無料。
この件に関して昨日ツィートしましたが、反響が大きかったので、永久版としてブログに記事を書きます。
ワシントンDCにあり、アメリカの国立博物館であるスミソニアン博物館(Smithsonian Institute)は2015年1月1日、ウェブサイトに同博物館所蔵の美術品のうち、フリーア(Freer)美術館とアーサー・M・サックラー(Arthur M. Sackler)美術館の所有する4万点以上の美術品の高解像度画像の一般公開を開始しました。
【Smithsonian Institute、Freer and Sackler Galleries】Press Release:Freer and Sackler Galleries Launch “Open F|S” Initiative Jan. 1, 2015 - 2014年12月30日
公開サイトは、
【Smithsonian Institute、Freer and Sackler Galleries】Open F|S トップページ
です。ダウンロード画像は一作品あたり数メガバイト~10数メガバイトのサイズになります。スミソニアン博物館では今回の公開のために5万以上の画像を撮影し、そのデータ容量は10テラバイトを超えた、と話しています。
ダウンロードした画像の私的利用は自由で、スマホやPCのウォールペーパーとして使用するなり、学校の宿題のレポートに使うなり、友達や家族への贈り物に何かに印刷して使うなり、自由に使えます。スミソニアンでは「面白い使用例は写真を添えてEメールで教えて欲しい。」と言っています。
また、この画像を基にしたアプリなどの開発も、奨励されています。
ただし、画像を商用利用する場合には、スミソニアン博物館からの承諾が必要です。
この所蔵品のディジタル化は、2013年5月9日にオバマ大統領が署名して発令した大統領令「Making Open and Machine Readable the New Default for Government Information」に基づき、「政府の情報をディジタル化(マシン・リーダブル)して一般公開(オープンに)することを、新しい標準と定める」に沿って、国立博物館であるスミソニアン博物館が準備してきたものです。
【White Houseブログ】Executive Order — Making Open and Machine Readable the New Default for Government Information - 2013年5月9日
この大統領令発令の1年後の2014年5月9日には、この「政府の情報のディジタル化」進捗報告として、スミソニアン博物館の所蔵品もディジタル化され、まもなく一般公開されることが伝えられていました。
【White Houseブログ】Continued Progress and Plans for Open Government Data - 2014年5月9日
そして、今年初めの正月(2015年1月1日)に4万点以上の画像がスミソニアン博物館のウェブサイト(si.edu)に公開されました。
今回の公開では新石器時代から現代までの美術品が含まれており、1806点のアメリカ美術、1176点の古代エジプト美術、2076点の古代近東美術、1万424点の中国美術、2683点のイスラム美術、1213点の南・南東アジア美術、その他、韓国、アルメニア、ビザンチン、ギリシャ、ローマ美術などが含まれているそうです。浮世絵や茶器・瀬戸物などを含む日本美術も12165点あるようです。
フリーア(Freer)美術館とアーサー・M・サックラー(Arthur M. Sackler)美術館は、今後は彫刻や陶器などの3次元画像の提供を数年後には開始したいそうです。また、他のスミソニアン博物館の収蔵品の全てもディジタル化する計画で、今後は他のスミソニアン博物館ユニットの画像公開が期待されるところです。
スミソニアンのブログサイトである
【Smithonian Instituteブログ】Bento
では、2015年1月2日から毎週金曜日(アメリカ時間)、「Friday Fave」と称し、これまで未公開の美術品を含め、ブログ執筆者お好みの美術品一点の解説を行っていくそうです。
スミソニアン博物館は
- フリーア美術館(Freer Gallery of Art)
- アーサー・M・サックラー美術館(Arthur M. Sackler Gallery)
- アメリカ歴史博物館
- 美術工芸博物館
- 国立自然博物館
- 国立航空宇宙博物館
など、合計19の博物館と、国立動物園から構成されており、全体で1億3700万点以上の収蔵品があると言われています。そして、その殆どが一般公開されること無く、あるいは、(一般公開されても)短い期間だけしかギャラリーに展示されないことが多く、このディジタル画像の公開によって、そのような目に触れることが稀な美術品も常時公開されることが期待されます。
スミソニアンの19の博物館と国立動物園への入館料・入園料は、どれも無料です。入場券はありませんので、予約なども不要です。
スミソニアン博物館の設立目的は、 “for the increase and diffusion of knowledge among men(人類の知識の増進と普及のために)”であり、したがって、スミソニアンの所有物は「人類のもの」だから、それを人類が共有するのは無料と言う考えですね。