AT&Tは今年(2014年)4月28日に、2015年後半から機内WiFi事業に参入する計画を発表していました。この計画ではHoneywell社との技術提携により、LTE速度のサービスを機内で提供することを目標としていました。航空機から地上への通信はLTE通信技術を使用して行われる予定で、AT&Tの所有している2.3GHz周波数使用権を使用することが予定されていました。
AT&Tが2015年後半に、「機内WiFi」事業に参入予定 – 2014年4月29日
しかし、AT&Tは本日、この計画を断念することを発表しました。
【Re/Code】AT&T Abandons Plans for In-Flight Wireless Service (Updated) – 2014年11月10日
直接の理由は明確にしていませんが、航空会社は既に既存の機内WiFiサービス会社のGoGoやRow44社と長期契約を結んでおり、それを解約してAT&Tに変更するには違約金を払う必要があり、航空会社がそれを嫌ってAT&Tとの契約を前向きに考えられないことが主原因、とRe/Codeの記事は分析しています。
また、先週発表されましたが、AT&Tはメキシコ第3位の携帯事業会社Iusacellを25億ドルで買収することを発表しており、その後にブラジル進出や、メキシコの他の資産(メキシコ新政府による独占禁止法適用を迫られて一部事業売却を迫られているAmerica Movilの部分資産)の買収も可能性があるとうわさされており、さらに、アメリカ国内で買収審議中のDirectTVの買収にも資金が必要とされています。
本日のAT&Tの発表では、これらの「他の投資への資本の優先」が、機内WiFi事業キャンセルの直接の理由と発表されています。
【Runway Girl Network】Exclusive: AT&T no longer interested in inflight connectivity – 2014年11月10日
まあ、1年以上も先の話なので、われわれ利用者としては「ふむふむ」程度で聞いていれば良いのですが、通信技術者の方は興味があるかもしれません。
AT&Tは本日プレスリリースを発表し、2015年後半にアメリカ国内線での「機内WiFi」事業に参入予定であることを示しました。
【BGR】AT&T’s next big move: In-flight WiFi based on its high-speed LTE service – 2014年4月28日
AT&Tの機内WiFiサービスは、Honeywell社の協力を受けて開発され、機内はWiFiで、航空機から地上への通信はLTE通信技術を使用して行われます。
AT&Tは同社の「地対空」通信技術と、Honeywell社の機内設備の技術で、既存の機内WiFiサービスで苦情の多い「遅い速度」「速度の不安定」の問題を解決出来るとしています。
また、このサービスに参入するためにAT&Tの新規の設備投資は不要で、既存の基地局設備で可能である、とプレスリリースでは言及しています。
AT&TはどのLTE周波数をこの目的のために使用するのか、技術的な詳細はまったく発表していませんが、同社は700MHz Band 17、1900MHz Band 2、850MHz Band 5、AWS Band 4の電波使用権の他に、2012年12月に権利をNextWave Wireless、Comcast、Horizon Wi-Com、San Diego Gas & Electric Companyなどから購入した、現在は全く使用していない2.3GHz Band 30または40の使用権を所有しています。
AT&Tの機内WiFi事業への参入が始まれば、GoGoやRow44(Southwest航空の機内WiFiサービスプロバイダー)など他社の機内WiFi事業にも影響が出るのではないか、という懸念から、GoGoの株はAT&Tプレスリリース後に一時7%下落したものの、終値は前日比1%上回っています。
【ZDNet】AT&T aims to take on Gogo, launch in-flight network based on LTE – 2014年4月28日
また、このサービスが開始されると、AT&Tの携帯加入者は機内WiFiにはSIM認証で自動的にアクセスできるようになり、無料、または、何らかのオプションサービスで格安で利用できるようになるかもしれません。
AT&Tの(地上)公衆WiFiサービスは既にSIM認証を1~2年前から実施しており、AT&T加入者は認証無しでアクセスできます。AT&T以外の加入者は、サインイン画面の使用許諾に合意する必要があります。
既にアメリカ国内同社所有機の約75%の400機で機内WiFiと、WiFiで映画放映を、それぞれ1日$8と$5で2013年2月からサービス開始しているアメリカの中距離ディスカウント(LCC)航空会社Southwest航空が、
Southwest航空、機内映画を自分のiPad/スマホで見られるサービス開始。 – 2013年2月23日
2013年7月1日より衛星テレビ放送のDISH社と協力し、機内WiFiを提供している400機全てで、DISH社のオンデマンドTVプログラムサービスと13の生放送チャンネルを、期間限定で無料で提供します。
DISH and Southwest Airlines bring free, live & on-demand TV to smartphones & tablets on WiFi flights – 2013年7月2日
“Southwest航空が、自分のiPhone/iPadを使って機内で無料でオンデマンドTV/ライブTVを視聴できるサービスを開始” の続きを読む