アメリカで医療通訳士として活動するためのステップ・バイ・ステップ手順


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1ヶ月ほど前にアメリカでの医療通訳士に関してまとめてみました。
アメリカの医療通訳士の資格と、その仕事 – 2015年3月29日

今日は、アメリカで医療通訳士として活動するために必要な手順を、ステップ・バイ・ステップで書きます。

1.高卒以上の学歴があること

まあ、医療通訳士を目指す殆どの通訳者はこの条件を満たしていると思いますので、問題は無いと思います。
が、この条件は以下に書く資格を受けるための前提(必須)条件でもありますので、書いておきます。

2.英語を習得していることを証明できること

特に英語(英会話、通訳)の学校に別途行く必要は無く、例えば、「アメリカの大学や大学院などで(何の専攻でも良いから)学位を取得した」、なども「英語の授業に参加して、理解できている」ということで、英語の習得済みと認定されます。

3.英語と、自国語(またはその他の言語)での通訳能力が(既に)あること

以下に記す医療通訳研修コースは通訳能力をゼロから教えるものではないため、医療通訳士として更なる資格を取得して医療通訳の分野で活動するには、既に通訳能力があって、通訳として数年の経験があることが、望ましいです。

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アメリカの医療通訳士の資格と、その仕事


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日本でも近年、医療通訳士が制度化されてきましたが、アメリカの医療通訳士の資格について、思ったことを書いてみたいと思います。

まず、医療通訳士が必要になった背景ですが・・・

■ なぜアメリカで医療通訳士が必要か?

(1)Title VI of Civil Rights Act of 1964 サービスへのアクセスの平等
1964年7月2日に制定されたアメリカの1964年公民権法(Civil Rights Act of 1964)、第6章(Title VI)、第601節に、以下の文章が明記されています。
“No person in the United States shall on the ground of race, color or national origin, be excluded from participation in, be denied the benefits of, or be subjected to discrimination under any program or activity receiving Federal financial assistance.”
アメリカ国内に住んでいる人は、人種、皮膚の色、出身国に差別されずに、連邦政府の補助を受けているプログラムや活動を受ける際に、差別を受けてはならない。
※ 「言葉の壁も、差別の対象になってはならない」というのが、連邦政府の見解です。

(2)大統領執行命令 13166(2000年) 言語アクセスの平等
2000年、当時のクリントン大統領は大統領執行命令(Presidential Executive Order) 13166を発令し、連邦政府、および、連邦政府の補助を受けている機関が、英語を母国語とせず、コミュニケーションに不自由のある人(Limited English Proficiency)に対しても、同等のサービスが出来るよう、それぞれの機関が通訳サービスなどを向上するよう伝達しています。
※ 一定の基準で通訳サービスを提供していない機関は、連邦補助金を受けられなくなります。

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アメリカの通訳の資格(医療通訳、法廷通訳)と、無料通訳サービス


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通訳の場に借り出されて、良く誤解されることがあるので、標題の件を一度書いてみたいと思います。

まず、
● アメリカでは通訳を職務として行うのに、基本的には資格は不要です。 エスコート(案内)通訳や技術通訳や同時通訳にさえ、資格も検定試験も、ありません。本人の通訳能力次第です。

※ 通訳専門の養成コースを持つコミュニティーカレッジ、4年制大学、および、修士課程大学院はあります。しかし、それを履修していないと通訳業が出来ないわけではありません。
また、これらのコースは通訳歴が短かったり、これまで職業として通訳をしたことが無い人に、向いています。大学院の場合には、同時通訳や国際会議通訳など、もっと訓練したい人が進むべきコースです。

※ 一部に「通訳者の認定は、ATA(American Translators Association)が行う。」と書いている記事がありますが、これは間違いです。ATAの認定には通訳能力検定は無く、翻訳能力検定のみです。したがって、ATAの検定には口頭試験はありません。また、ATAの翻訳能力検定試験は、ATAという民間団体による翻訳「能力検定」試験であり、「資格」試験ではありません。

しかし、
● 「Title VI of the Civil Rights Act of 1964」(1964年制定公民権法、第6条)により、連邦政府の資金援助を受けている施設は、その施設が提供するサービスを、全ての人に対して、人種や言語の差別をせずに提供しないといけない。
ことになっています。特に、2000年8月11日に当時のBill Clinton大統領が大統領行政命令(Executive order)
【アメリカ司法省】EXECUTIVE ORDER 13166 : IMPROVING ACCESS TO SERVICES FOR PERSONS WITH LIMITED ENGLISH PROFICIENCY
を発令し、「連邦政府の援助を受けている全ての施設は、英語の理解力が欠如している(充分ではない)人に対しても、その施設のサービスを平等に使えるようにしなければならない。(それをしないと、連邦政府の資金援助やMedicaid/Medicareの支払いが断ち切られる。)」ことになりました。

ここで、以下の施設が特にこの「大統領行政命令(Executive order)」の対象になります。
● 病院 (特に、連邦政府の医療厚生プログラムのMedicare、Medicaid等対象の患者を少なくとも一部、受け付けている病院。通訳サービスは、通訳を必要とする全患者に提供する必要あり。)
● 裁判所 (特に、郡(County)裁判所、州裁判所)
● 学校(K-12年生の義務教育施設)・・・学校では、Teacher’s Conference(親が先生と個別面談する)の時に通訳をリクエストできるようにしている学校区があります。

なお、アメリカでは「病院」は主に「手術と、入院する医療施設」であり、お医者さんに診察に行く場合の所謂「Medical Office、Private Practice」は、連邦政府医療援助プログラム(Medicare、Medicaid)の患者を受け付けていない場合には、この「大統領行政命令(Executive order)」の対象になりません。

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