【今更聞けない、海外在住者のための】「SIMフリーって、何よ?」「国際ローミングと、どう違う?」


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最近のあちこち(当サイトに限らない)の質問を見ていると、どうやら「SIMフリー」とはなにか、また、海外から日本へ一時帰国・長期帰国する際にはどうすれば携帯が使えるか、を良く理解していない人が一段と目立ってきているように思います。

これは、恐らく、・・・、今まで「SIMフリー」や「国際ローミング」という言葉を理解している人は、既に日本から海外へ旅行する場合や、海外から日本へ一時帰国する際に、その「SIMフリー」機能を活用して現地SIMを使用しているので、今更説明は不要。
しかし、最近色んなところで「SIMフリー」「SIMフリー化」「SIMロック解除」等と言う言葉を目にしたり、ニュースや周囲の人が話しているのを聞いたりして、これまでそういうことを気にしていなかった人達が興味を持ち始めてきたために、そういう人たちが良く理解せずに話したり、質問しているからだと思います。

そこで、「海外在住者が、日本へ一時帰国する場合」、または、「日本在住者が海外旅行や出張などで一時渡航する場合」を前提として、実際に「海外在住者が、日本で携帯を使う」、または、「日本在住者が海外旅行や出張などで現地で携帯を使う」実用上の場合を想定して、「SIMフリーとは何なのか?」を考えて見ます。

■1. 「SIMフリー化」「SIMロック解除」って、何なのよ

その質問に答える前に、まず、携帯は「SIMロック」されている携帯があるからこそ、その「SIMロックされている携帯」を「SIMロック解除」するという手順があります。
また、「SIMロックされている携帯」があるからこそ、SIMロックされていない「SIMフリー」または「SIMロックフリー」の携帯があります。

それでは、
●「SIMロックされている携帯」とは、どんな携帯でしょう?

現在販売されている世界の殆どの携帯は、携帯の本体にSIMカードというプラスチックの板を挿入し、使用します。
SIMカードは、写真のようなプラスチックの小さなカードで、片面には金属の接触面があります。
このSIMカードには、金属の接触面の下に小さなICが格納されており、その中にはSIM番号(ICCID番号)と言う、世界で一つしかない番号が書かれています。その他に、このSIMカードを発行した携帯(キャリア)会社の国番号と、キャリア(会社)番号もSIMカードに保存されている情報の一部に含まれています。
携帯が回線に繋がって通信すると、このSIM番号が回線業者のサーバーに送信され、サーバーに登録されているデータベースを検索して、SIM番号から電話番号を判断します。そのために、もし、誰かがあなたの電話番号に電話すると、その電話番号に対応するSIM番号であるあなたの携帯に電話が繋がるのです。

と言うわけで、携帯を使うには、必ず、携帯本体とSIMカードが必要です。
つまり、SIMカードには電話番号が割り当てられ、それを携帯本体に挿入して、携帯として通話や通信を使用することが出来ます。
携帯本体には、電話番号はありません。

例外として、世界のCDMA2000通信方式の携帯会社の一部、特に、アメリカではVerizon、Sprint、Virgin Mobile USA、BoostMobile、そして、VerizonまたはSprintの回線を使用しているTracfoneなどの一部の携帯で、かつ、3G専用携帯は、(iPhone 4およびグローバル・レディ端末以外は)SIMカードを使用していません。
さらに、WiMAX(オリジナルのWiMAX)端末も、SIMカードを使用していません。
Verizon、Sprint、Virgin Mobile USA、BoostMobile等の端末でも、3Gの他に4G LTEにも対応する端末は、SIMカードを使用しています。

SIMカードを使用していない端末は古い端末が多いので、この記事ではこれ以上は触れません。

ということは、原則的に、SIMカードを他の携帯に入れ替えれば、同じ電話番号で使用出来るということになります。

ところが、携帯会社によっては、自社が販売した携帯本体を、自社の回線で使用することを前提に、定価や製造価格より割引したり、分割払いの支払い方法を提供しています。そこで、簡単に他の会社の契約(SIMカード)で自社の端末を使われると損をするので、携帯に「SIMロック」を掛けます。

「SIMロックされている携帯」では、その携帯を販売した、あるいは、その携帯の使用を意図された携帯会社のSIMカードしか読めません。それ以外の携帯会社のSIMカードを読もうとすると、エラーメッセージが表示されます。このような携帯本体では、そもそも他社SIMカードが読めないので、SIMカード番号が読み取れず、したがって、そのSIMカードと携帯本体の組み合わせでは、通話や通信が出来ず、電話番号も判別できません。

これが、「SIMロックされている携帯」です。

ただし、「SIMロックされている携帯」でも、同系列のMVNOのSIMは読めます。つまり、AT&T用の携帯なら、SIMロックされたままでも、AT&Tの回線を使用しているH2OのSIMが読めます。T-Mobile US用の携帯なら、SIMロックされたままでもZIP SIM(旧Ready SIM)やSimple MobileのSIMが読めます。ドコモ用の携帯なら、SIMロックされたままでも、ドコモの回線を使用している日本通信(b-mobile)やIIJmioのSIMが読めます。
同じ回線を使用しているMVNO(プリペイド)SIMカードの会社のSIMを使用するためには、原則的に、わざわざSIMロック解除をする必要はありません。

●「SIMロック解除」すると、どうなるの?

そこで、他社のSIMカードも読めるようにする手順が、「SIMロック解除」または「ファクトリー・アンロック」と呼ばれる行為になります。現在では、どちらも同じことを意味しています。

昔は、iPhoneではアップルや携帯会社に正式(または不正)にSIMロック解除をリクエストする以外に、iPhoneを脱獄した上でSIMロックを解除する脱獄アプリを使ってSIMフリーにしたり、特殊なアダプターをSIMの下に噛ませてSIMフリーにすることが出来ました。このような行為によってSIMフリー化することと区別するために、iPhoneでは永久SIMロック解除の行為を「ファクトリー・アンロック」と呼ぶことがあります。

現在では、古いOSバージョン以外ではiPhoneは脱獄してもSIMフリー化は出来ません。「脱獄」と「SIMフリー化」は別の手順です。(ここでは詳しく触れません。)
特殊なアダプターを使う方法も、それを使うと2G通信しか出来ないと言う制限があります。したがって、実用性がありません。

したがって、現在では「SIMロック解除」=「ファクトリー・アンロック」と同意語と考えて、ほぼ間違いありません。

「SIMロック解除」=「ファクトリー・アンロック」をすると、その携帯本体は他社SIMカードも読めるようになります。しかし、携帯本体の通信機能に関しては、「SIMロック解除」「SIMフリー化」しても、何も変わりません!

SIMロック解除は、一般に携帯会社にリクエストし、条件が満たされていれば、無料(アメリカ)または有料でSIMロック解除してもらえます。または、SIMロック解除するためのコードが貰えます。
キャリアのSIMロック解除条件に満たない場合には、サードパーティーのSIMロック解除業者にお金を払えば、SIMロック解除をしてくれるか、SIMロック解除するためのコードが貰える機種もあります。

国によっては、初めから「SIMフリー」=「SIMロック解除された携帯」を別途販売している場合もあります。特に、オンラインで販売していることは多いです。中古携帯販売業者がSIMロック解除して、それをSIMフリー携帯として販売していることもあります。

なお、香港、シンガポール、その他のアジアの国では法律でSIMフリーの携帯しか国内販売が出来ません。このような国で購入した携帯は、すべて「SIMフリー」=「SIMロック解除済み」なので、どの携帯会社のSIMカードでも読めます。

■2.「SIMフリー」「SIMロック解除」した携帯は、日本(自分の住んでいる国以外)で使えるの?

これだけでは、質問が不明瞭ですよね。

(1)まず、ただ単に海外在住者が日本で、あるいは、日本の人が海外旅行で現地で、自分の携帯を使用したいのなら、SIMロック解除する必要はありません。自分が住んでいる国で契約しているSIMを挿入したまま、日本へ行って、「国際ローミング料金」で使用できます。場合によっては、事前に「国際ローミング」できるように、契約している携帯会社のカスタマーサービスに電話するなり、オンラインでアカウント設定を変えるなり、の必要がある携帯会社もあります。自分が自国で契約している携帯会社との契約次第なので、それぞれお調べください。
また、携帯本体が現地の周波数に対応しているかどうかも、問題になります。特に、アメリカ・カナダ・メキシコの北米3カ国は使用している携帯の周波数が世界の残りの国と違うので、古い携帯を持っている人は日本の周波数(2100MHz)に対応していない可能性があります。事前に確認してください。最近のスマホは全世界の3G周波数に対応しているものが多いので、問題無いものが多いですが、全てとは限りません。
逆に、日本やアジア・欧州・豪州居住の方は北米3ヵ国へ旅行する際には、自分の携帯が現地の周波数(850MHzまたは1900MHz)に対応しているか、調べてください。

ただし、「国際ローミング」通信料金は高いだけでなく、上にも書いたように、電話番号はSIMに割り当てられているので、SIMを変えなければ、電話番号も変わりません。つまり、SIMを変えなければ、その携帯で日本へ行っても、電話番号はアメリカなりなんなり、自国の電話番号のままです。その状態で現地の人に自分の携帯に電話をしてもらいたくとも、現地の人にとっては通話料金の高い国際電話をかけることになります。まあ、よほど重要な電話でもなければ、掛けてくれませんよね。

つまり、たとえ本体のSIMロックを解除しても、現地のSIMを入手して、それを使わなければ、現地の電話番号は持てないし、現地の通話料金では使えません。

(2)そこで、現地の電話番号を持ち、現地の通話料金で通信をするには、「SIMフリー」「SIMロック解除」した携帯以外に、現地のSIMカードを入手する必要があります。そして、「SIMフリー」「SIMロック解除」した携帯であれば、自国の携帯会社のSIM以外に、現地のSIMカード(つまり、自国で自分が契約している携帯会社のSIMカード以外のSIMカード)も読めるはずです。よって、現地で電話番号を持つためには、第一条件として、使用する携帯が「SIMフリー」「SIMロック解除」した携帯か、使用する予定の現地のSIMカードにロックされた携帯が必要です。

そして、SIMカードを入手するだけではなく、通信料を支払う必要もあります。特に、アメリカの場合はSIMカード自体は家電量販店やディスカウント百貨店で$5-20くらいで購入できますが、それには通信料金が含まれていない場合があるので、要注意です。SIMカードだけ買っても、その価格に通話料が含まれていないSIMカードは、そのSIMカードを携帯本体に挿入しただけでは、何も出来ません。

当然、現地のSIMカードを入手し、それを「アクティベート」して使えるようになると、現地の電話番号がそのSIMカードに割り当てられます。

(1)の使い方で「国際ローミング」料金で使うのか、(2)の現地SIMで使うのか、のどちらに決めるかは、
 - 料金の問題(使う頻度の問題。頻度が多ければ、国際ローミングで使っていると総計料金は遥かに高くなる。)
 - 現地の電話番号が必要かどうか(特に、自分が電話するときよりも、現地の人に自分へ電話してもらいたいかどうか)
で決まります。

ソフトバンクの「アメリカ放題」は、原則的に「アメリカでの国際ローンミング料金が(制限内で)無料になる、国際ローミングプラン」です。しかし、そのときに使うSIMカードはソフトバンクのSIMカードのままですから、アメリカへ行っても電話番号は日本の電話番号のままです。よって、現地の人が「アメリカ放題」中でアメリカを訪問している自分に電話するときには、日本の電話番号への国際電話発信になります。当然、その現地の人の国際電話発信通話料金は高く、初めから「高い」と思って電話してくれない現地の人も多く居るでしょう。
現地の人にも気軽に自分に電話してもらうには、「アメリカ放題」をやめて現地のSIMカードを入手して(SIMフリー端末で)使用するか、もう一台現地の電話番号の携帯が必要です。

■3.周波数対応も、忘れずに!

さぁ、「携帯をSIMロック解除しました、あるいは、SIMフリー携帯を買いました。」、そして、「現地のSIMを入手して、アクティベートし、通話ができるようになりました。」で、現地で通話やデータ通信が使えるようになるのでしょうか?

いいえ、特に、北米と、それ以外の地域とを行き来する場合には、もう一つ考えなければならないことがあります。それは、携帯本体が両方の周波数に対応しているかどうか、少なくとも現地の周波数に対応しているかどうか、です。SIMロック解除したところで、他社SIMが読めるようになるだけで、携帯本体の通信機能や周波数対応が突然魔法のように現地の電波事情に対応するわけではありません。むしろ、携帯本体の機能は、SIMロック解除しても全く変わりません!したがって、もともと携帯本体が、これから使用する国の周波数(や通信方式)に対応していなければ、SIMロック解除しても現地で使えるようにはなりません。

以下は、日本と地域ごとに主に使われている携帯電話の周波数です。
つまり、アジアの多くの国・欧州・豪州と日本とを行き来している場合には、少なくともどちらの国・地域でも共通な3G 2100MHzの周波数で通信できます。したがって、あまり心配はありません。しかし、北米と日本(その他の地域)を行き来する場合には、使用する携帯が両地域で使用している携帯周波数を広くカバーしていないと、使えません。

まあ、iPhoneやNexusナントカの携帯なら世界どこで使っても間違いないですけど、それ以外の携帯本体を使う場合には、周波数対応もご注意を。

地域 2G周波数 3G周波数 4G LTE周波数
アメリカ・カナダ・メキシコ(北米) 850MHz、1900MHz 850MHz、1900MHz、AWS(上り1700MHz/下り2100MHz) 携帯会社によって違う。
アジア多数・欧州・豪州 900MHz、1800MHz 殆どの国で2100MHzは必ずある。 携帯会社によって違う。
日本 サービスしていない 殆ど全国で2100MHzはある。 携帯会社によって違う。

■4.抜いた(使っていない)SIMカードの料金は、どうなるの?

さあ、「自分が自国で使っているSIMフリーの携帯を日本へ持っていって、日本へ着いたら現地のSIMカードを入手して、それを自分の携帯に挿入して使ったとして、現地のSIMカードは本体から抜いていますが、料金はどうなっているの?通話やテキストメッセージは受けられるの?」

もう一度、この記事の最初に書いたことを思い出しましょう。
「電話番号は、SIMカードに割り当てられます。」
現在使用している携帯には、日本のSIMカードが入っている、とします。

当然、自国のSIMカードは携帯に入っていないので、「その電話番号(の携帯)は、現在、電源が入っていないか、圏外にあるようです。」状態になります。自国の電話番号では電話もテキストも受けられません。相手が掛けると、自国の留守番電話システムに繋がります。この状態では「国際ローミング料金」は発生しません。しかし、毎月の基本料金は継続して発生しています。

「でも、自国でも大事な連絡事項があり、自国の電話番号でも受けたいのだが・・・」と言う方は、両方の電話番号を持つ必要があります。つまり、携帯が2台必要です。(または、2枚SIMを挿入できるデュアルSIM携帯があるので、それを使います。ただし、デュアルSIM携帯は「同時」待ち受け出来る携帯は少なく、切り替えて一度にどちらか1枚使うタイプのが多いので、片方の電話番号をもう一方の違う国の電話番号に転送設定しておかないと意味が無い場合もあります。)

まあ、結局、自国と訪問国と、両方に頻繁に連絡が必要な場合には、2台携帯を持ち、自国電話番号と現地電話番号を両方持っていたほうが便利な場合があります。

■5.SIMカードが購入できるかどうかは、現地の法律にもよります。

● 最後に、現地SIMカードが購入できるかどうかは、現地の法律にもよります。

たとえば、日本では2006年4月1日から「携帯電話不正利用防止法」という法律があり、携帯電話を使って匿名で電話して詐欺などを働く「オレオレ詐欺」などに対応するため、日本に住んでいる「公的な証拠」、つまり、「居所証明」を提示しないと、通話機能のあるSIMカードは基本的に入手できません。「居所証明」とは「日本の住民票」またはそれを基に作られた証明書(例:運転免許証、健康保険証)、自宅の公共料金の請求書(姓が同じ家族宛てのものでも良いらしい)、日本の国民年金の通知書の住所、などです。面白いことに、日本国パスポートの住所欄に書いてある自筆住所(日本国内の住所)は、裏付け無しに「居所証明」として受け付けてくれるらしいです。
日本国外のパスポートを持っている人の場合には、日本の役所への外国人登録を済ましている証明が必要です。外国人登録は、90日以上の日本への滞在ビザ(査証)が無いと受け付けてくれません。したがって、日本国以外のパスポートを持っている人は「居所証明」は提出できませんので、この方法で日本国内電話番号の通話機能付きのSIMを入手することは、不可能です。

しかし、東京オリンピックに向けて、最近では海外から日本への旅行者に対しては「パスポートの入国スタンプ」を「証明」として購入(アクティベート)できる旅行者用の通話可能な日本国内用SIMカードもあるようです。

また、SIMレンタルの場合には、特に「居所証明」は必要なく、身分証明書とクレジットカードだけで借りられます。
データ通信専用SIMの場合には「携帯電話不正利用防止法」対象外なので、居所証明は不要です。

その他、国によっては現地SIMは到着国際空港だけで購入できるとか、現地の友人が居ないと購入が難しいとか、現地の国民番号(社会保障番号)を持っていないと自分の名義では買えないとか、といった規則の国もあるようなので、ご注意。

アメリカはその点、14歳以上であれば、誰でも身分証明書無し、かつ、現地の住所無しで、プリペイドSIMカードは購入できます。ただし、支払いにクレジットカードを使用した場合には、クレジットカードが本人のものであることを身分証明することは、要求されることはあるようです。しかし、プリペイド通信契約そのものには身分証明書も居所証明も不要で、記入が必要であれば、自己申告だけで契約できます。

● もう一つ、携帯本体が、現地の電波法・通信法で許可されていないと、法的に現地国で使用できない場合があります。特に日本の「技適(技術適合)マーク」に関しては、は悪名高い法律です。
ただし、2020年東京オリンピックに向けて、海外から日本への訪問者の、日本国内での短期の携帯利用に関しては、法律緩和を行う方向にあるので、ここでは詳しく取り上げません。多分、FCC(アメリカ)またはCE(欧州)など、自国で通信端末として許可を得ている端末は、日本国内での国外居住者による短期使用は、近い将来に違法でなくなると思います。

もっと誰にでもわかって貰うために追加・修正していくつもりなので、初心者でまだわからないこと・不明な点があれば、コメント欄に投稿してください。 (要するに、一回書いたら、もう二度と書きたくないのです。個別対応しなくて良いように、この記事を用意しているのです、ハイ。)



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「【今更聞けない、海外在住者のための】「SIMフリーって、何よ?」「国際ローミングと、どう違う?」」への11件のフィードバック

  1. 大変、参考になる記事で、重宝していて、参考にさせて頂いています。

    「SIMロックされている携帯」でも、同系列のMVNOのSIMは読めるという話の続きで、質問があります。
    米国で入手したt-mobile の端末があり、t-mobileにロックされています。

    これを、本国のドイツに持って行った場合、現地のt-mobileのプリイペイドsimは、この端末をアンロックしないでも使えるでしょうか?(ただし、周波数、方式などの条件は、すべてOKの場合)

    また、同様にt-mobileの各国の現地法人のプリイペイドsimが使えるでしょうか?
    (ただし、周波数、方式などの条件は、すべてOKの場合)

    管理人 返信:

    結論から先に書くと、SIMロックされている端末では(一般的には)「系列会社のSIMでも、国が違うと、使えません。」

    上の記事では話を簡単にするために「回線提供会社(例:T-Mobile US)と、そのMVNO」は(端末がSIMロックされていても)SIMの入れ替えが可能(SIMが読める)、と書きました。しかし、SIMロックされている端末では、SIMに書き込まれている「国番号(モービル・カントリー・コード)(MCC)」と「その国内のキャリア(モービル・ネットワーク・コード)番号(MNC)」が特定の値である場合にのみ、SIMを読み込むように設定されているのが通常です。
    そして、MVNOのSIMは、回線提供会社と同じMCC/MNCを使っています。そうしないと
    1.SIMを読み込めない
    2.読めたとしても、(デフォルト処理では)他キャリアへのローミング扱いになる
    からです。特に、2.の問題が大きいと思います。

    たとえば、
    T-Mobile USのMCC/MNC=310/260
    Ready SIMのSIMのMCC/MNC=310/260
    Simple MobileのSIMのMCC/MNC=310/260
    ドイツテレコムのMCC/MNC=262/01
    T-Mobile UK(EE)のMCC/MNC=234/30
    T-Mobile オーストラリアのMCC/MNC=232/03
    などであり、アメリカのT-Mobile US用の端末は「310/260」しか読めないようにSIMロックされています(いるはずです)。

    ただし、企業の買収や合併により、2つ以上の異なるMCC/MNCのSIMを一台の端末で読めるようにすることは可能だと思うので、複数の「MCC/MNC」の組み合わせを読めるようにすることは技術的に可能でしょう。しかし、国ごとに周波数、特にLTEの周波数とか違うし、端末認証手順も違うので、わざわざ一台の端末を複数の国で使用するように設計するのは難しい(ソフトバンク/Sprintでも、Aquos Crystalはソフトバンク版とSprint版で対応周波数が違っていた)ので、同系列だけども国を超えた(MCCが違う)SIMを読めるようにするのは、一般的では無いし、そうする意味が無いと思います。

  2. ソフトバンクモバイルのように、SIMロックをIMSIの番台までみる形でかけてくるのは欧州・北米までみたとしても少ないのでしょうか?
    あと、KDDIのようにオペレータが2つ以上のMNCを持って、いずれか片方のMNCを持ったSIMが使えないようなロックをかけているオペレータは存在しているんでしょうか?
    両者ともに変な運用をしているので困ってしまいます

    管理人 返信:

    欧州は知りませんが・・・

    >ソフトバンクモバイルのように、SIMロックをIMSIの番台までみる形でかけてくるのは欧州・北米までみたとしても少ないのでしょうか?

    アメリカではMVNOが10数年前から存在していますので、IMSIの番台までチェックするとMVNOが端末が使えなくなる可能性があるので、それでSIMロックしているのは知らないですね。しかし、SIMロックはIMSIの番台でしていなくとも、サービスをIMSIの番台で制御しているケースはあります。(例:T-Mobile USのポケットWiFi専用SIM。端末はどのT-Mo SIMも読めて、回線には繋がるが、IMSIの番台によってはネットは特定のURLにしか繋がらない・・・とか。それを制御しているのは、端末側ではなく、回線側ですが。)

    >あと、KDDIのようにオペレータが2つ以上のMNCを持って、いずれか片方のMNCを持ったSIMが使えないようなロックをかけているオペレータは存在しているんでしょうか?

    CDMA2000のキャリアは、LTE通信がまだ始まっていなかった(3G回線までしかなかった)ころはGSM標準団体からMNCを付与されておらず、SIMはGSM規格には準拠していなかったので、GSM規格のMNC/MCCとは無関係のSIM番号を使っていたか、または、パートナーである外国のGSM SIMをローミングようとして使っていました。(例:KDDIの3Gオンリーは香港「3(Three)」のSIMを使っていたり、VerizonがイギリスVodafoneのSIMを使っていたり・・・)
    その後、CDMA2000版iPhone 4Sが出ましたが、これはSIMを必要とする端末でしたが、LTEには対応していなかったので、GSM規格に合わない暫定的なSIMを使っていました。(VerizonやSprintのiPhone 4S用SIM)
    iPhone 5になってGSM規格に準拠したLTE用SIMが使用されるようになりました。

    このようなCDMA2000キャリアのLTE非対応SIMの中には、GSM規格に準拠した番号(MNC)付けがされていないSIMがあり、LTE対応端末で使用すると「SIM Not Valid(不正なSIMです)」のエラーメッセージが出ることがあります。

    hadsn 返信:

    返信ありがとうございます。T-Mobileの例は(SIMに格納されているIMSIではなく)端末の製造番号たるIMEIを見て、契約によってはサービスの内容を制限している、という事ですね。
    こういう例は日本でも、ドコモが自社向けの端末でなければスマートフォン向けISPであるspモードに接続させない(データ端末向けのmopera Uは可)、というものがあり、やはり海外でもそういう制限をしてくるんだなあ、と思いました。

    貴ブログでも以前取り上げられたことがあるようにソフトバンクのSIMロックはMSIN部分まで絡んだ複雑怪奇なものであり、たとえばiPhoneはiPhone契約のSIMでしか基本的にアクティベーション・使用ができません。

    ソフトバンク専用iPhoneアクティベーションカードの必要条件
    https://blogfromamerica.com/wp/?p=6359

    このような厄介なSIMロックがかけられているためソフトバンクで発売されたスマートフォンでは、ソフトバンクを利用したMVNOたるワイモバイルのSIM※を使えないだけでなく、ソフトバンクのガラケー(フィーチャーフォン)で契約したSIMすら使えません。

    ※ワイモバイルにはイーモバイル扱いのSIMとソフトバンク扱いSIMの両方が存在するが、今回はソフトバンク扱いのSIMを指している

    一方でKDDIの場合はUIMが3G契約・LTE契約・LTE契約のVoLTE端末向けの3種類に分かれており、本題からは外れますが3G契約のUIMであっても海外ではGSM端末に差し替えることによってプラスチックローミングをグローバルパスポートGSM(旧・グローバルエキスパート)という名称で提供しております。
    そして先にも書いたように音声通話をCDMA2000でする機種とVoLTEによってLTEでする機種とでは使われているUIMが異なり、CDMA2000で行う機種は440-50の、VoLTEで行う機種は440-51のネットワークにそれぞれ登録してデータ通信・音声通話を行います(ただしiPhone6は440-50でVoLTEも行う)。
    このような事情があってなのかCDMA2000で通話を行う機種ではVoLTE用のSIMを使うことができません。逆もまた然りです。

    これらのような例がアメリカに存在しているのかなあ、と思って質問させていただきました。

    ちなみにauのCDMA2000で通話を行う機種向けのLTE契約で貸し出されるSIMはCDMA扱いなのに対し、VoLTE機種向けのLTE契約で貸し出されるSIMはGSM扱いなのだそうです。

    管理人 返信:

    > 返信ありがとうございます。T-Mobileの例は(SIMに格納されているIMSIではなく)端末の製造番号たるIMEIを見て、契約によってはサービスの内容を制限している、という事ですね。

    GSMキャリアのT-Mobile USやAT&Tは、SIMを自由に端末に差し替え出来ますので、端末のIMEI番号だけをチェックしても契約内容はわかりません。契約内容がわかるのはSIM(SIM番号)です。したがって、IMEI番号(端末の種類)だけチェックしてもダメで、SIMも両方チェックします。
    モバイルルーター用SIMをスマホや携帯に挿入しても使えないし、スマホ用SIMをモバイルルーターに挿入しても使えませんので。

    >本題からは外れますが3G契約のUIMであっても海外ではGSM端末に差し替えることによってプラスチックローミングをグローバルパスポートGSM(旧・グローバルエキスパート)という名称で提供しております。

    はい、そのためにはKDDIの3G端末専用UIMはGSM規格の番号(MCC、MNC)を付与されたSIMになっています。つまり、GSM SIMです。ところが、KDDIは昔はGSMキャリアではなかったため、KDDI自体はGSM規格のMNCが割り当てられていませんでした。そこでKDDIの3G端末専用UIMは、海外パートナーである(確か)香港の「3(Three)」のMCC、MNCを使ったSIMだったと記憶しています。

    >このような事情があってなのかCDMA2000で通話を行う機種ではVoLTE用のSIMを使うことができません。逆もまた然りです。

    KDDIは最終的に3G CDMA2000を停波するのでしょう。そのために、3Gで通話の出来るSIMは、3Gを停波したときに使えなくなるようにしたほうが管理がしやすい、と思っているのではないでしょうかね。SIMの中に保存されているのは単なる数字だけなので、SIMでVoLTEするわけではないので、ホスト側の加入者管理システムさえしっかりしていれば、SIMを分ける必要はないんですが。

    >これらのような例がアメリカに存在しているのかなあ、と思って質問させていただきました。

    直前の文章にも書いたように、SIM自体には特殊な通信回路があるわけではなく、単なる数字の列なので、キャリアのホスト側の加入者(SIM)管理システムが普遍に対応できるようなシステムであれば、何もSIMで区別する必要は無いです。
    アメリカはキャリアのプランが多かったり、古いプランに加入している人はプラン変更までその古いプランのまま継続できたり、MVNOが各キャリアごとに数十という会社が存在していたり、ともかく、加入者(SIM)管理システムが複雑な場合でも柔軟に対応できるように出来ていると思います。
    たとえば、AT&TのSIMは、サイズの違いは別として、1枚のSIMはポストペイドでもプリペイドでもタブレットでもポケットWiFiでも、どのプランにでもアクチできます。また、加入の有効期限内であれば、通信プランやサービス(例:VoLTE)を変えても原則的にSIMを変える必要はありません。しかも、SIMのアクチ有効期限はありませんから、数年前に入手したSIMを今、アクチすることも出来ます。
    そういうのに柔軟に対応しているので、日本ほどはSIMで細かく制約を作る必要は無いのだと思います。

    要は、SIMの問題ではなく、携帯会社の加入者(SIM)管理システムを作ったSEや下請け会社の、システム開発能力の違いだと思います。

    hadsn 返信:

    > GSMキャリアのT-Mobile USやAT&Tは、SIMを自由に端末に差し替え出来ますので、端末のIMEI番号だけをチェックしても契約内容はわかりません。契約内容がわかるのはSIM(SIM番号)です。したがって、IMEI番号(端末の種類)だけチェックしてもダメで、SIMも両方チェックします。
    あくまでも(SIMに紐ついた)契約中のプランで接続させていい機種なのか、という意味でIMEIを見ている、という表現を使用しました。たしかに厳密に表現すると、どういう契約なのかを照合するにIMSIを見ますね。

    > KDDI自体はGSM規格のMNCが割り当てられていませんでした。そこでKDDIの3G端末専用UIMは、海外パートナーである(確か)香港の「3(Three)」のMCC、MNCを使ったSIMだったと記憶しています。
    SIMフリー版のiPhone4だか4SにKDDIの3G UIMを挿入したら、3のアカウント管理画面が出るだけで実質的に何もできなかった、と聞いたのはそういう理由だったんですね! 疑問が一つ消えました。

    KDDI版iPhone4Sを海外で使う!−米国編(4)
    http://mfunaki.hatenablog.jp/entry/20111105/p1

    > SIMの中に保存されているのは単なる数字だけなので、SIMでVoLTEするわけではないので、ホスト側の加入者管理システムさえしっかりしていれば、SIMを分ける必要はないんですが。
    CDMA通話用のLTE契約SIMは、CDMA2000由来の変な記述が残っているが故にSIMを分けたんじゃないか、と思っています。AndroidのTelephonyManagerで取得できる値が、VoLTE機種からではPHONE_TYPE_CDMAからPHONE_TYPE_GSMに変わっていますので。

    アメリカでは文化・地理的条件の違いのため、SIMを無節操に増やすという愚行ではなく、システムを肥大化させることによって手続きの煩雑さをなくした、という事なんですね。ご説明ありがとうございました。

    管理人 返信:

    >システムを肥大化させることによって手続きの煩雑さをなくした、

    「肥大化」というと語弊があります。今のシステムは(一般論として)「イベントドリブン(event-driven)で、モジュラー化」していますので、1970年代、80年代の従来型システム開発法に比べると、個々のモジュールははるかに小さく、作りやすくなっています。ただし、それ(システム)が膨大な数のモジュールで構成されていて、モジュール間のインターフェース(接続)も無数なので、バグの可能性も増えますけどね。

    管理人 返信:

    あと、もうひとつ、カルチャーの違いがあります。
    日本はなにかあるとショップへ行かないといけませんね。ショップも沢山有り、国土も狭いので、加入者もそれで文句を言わないですね。
    アメリカは国土も広く、ショップの無い田舎や郊外に住んでいる人も多く、ショップが空いている時間には働いていてショップへ行けない人も居るので、ショップへ行かなくても携帯プランが変更できるようにしよう、と昔から努力されています。
    したがって、機種変更や契約内容変更のたびにSIMを変えるのは、現実的ではないのです。
    なるべく同じSIMで機種変更や契約内容の変更が出来るようにしないと、加入者にとっても、ショップにとっても、手間が増えます。
    そういう、手間を減らそうという「合理的思想」があるかどうかの違いです。

    だから、プリペイド契約の場合のSIMのアクチは、アメリカは基本的に自分でやるのが原則です。日本や他のアジアの国だとアクチされたものが届く場合が多いか、ショップへ行かないといけない。(最近の日本のMVNOは変わりつつありかもしれませんが・・・)

    hadsn 返信:

    日本のプリペイドSIMは購入・契約時にアクティベーションするものと、自分で電話機を用いてアクティベーションするものと両方ありますね。
    やはり日本で(ショップに行って)購入・契約と同時にアクティベーションするのは携帯電話不正利用防止法の影響もあるかとは思います。

    管理人 返信:

    なるほど、確かに携帯電話不正利用防止法の影響は大きいですね。そのおかげで、訪日外国人や海外在住日本人は日本短期訪問では通話付SIMが購入困難になっているんですが。

    VoIPがもっと普及すると、携帯電話不正利用防止法の本人確認チェック機能もそのうち陳腐化しますね。

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