アメリカ4大キャリアが米政府の要請に応じて、盗難携帯のデータベース作成に協力


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アメリカ4大キャリアVerizon、AT&T、Sprint、T-Mobile USAは、米政府FCCの要請を受け、盗難、および、紛失携帯電話のシリアル番号のデータベースを作成することに協力することになりました。
これらのデータベースに登録された携帯電話は、アメリカ国内での通話・データ回線へのアクセスを許可するかどうかの判断に使われます。

このデータベースを作成することで盗難・紛失携帯電話(特にスマートフォン)の再利用を困難にし、これらの携帯の再販価値を下げることで、スマートフォンの盗難件数を減らそう、というのが目的です。

現在のところ、CDMAキャリア(アメリカでは2G/3G通信にSIMを使用していないキャリア)のVerizonとSprintは個別に盗難携帯データベースを作り、これらの携帯の再アクティベートを禁止しています。アメリカのCDMAキャリアはもともと、自社でアクティベートできる携帯は、自社で販売した携帯だけなので、このようなデータベースを自社で作るメリットがありました。また、CDMA通信方式では携帯のシリアル番号(MEIDまたはESN番号)が通信確立の際の端末識別の一部になっているので、このようなシステム構築が可能でもありました。

ところが、アメリカで2G/3G通信にSIMを使用しているAT&TとT-Mobile USAは「SIMを差し替えれば、携帯が使用できる」方式なので、これまで盗難携帯のデータベースは構築していませんでした。GSM/W-CDMA方式では携帯のシリアル番号(IMEI番号)ではなく、SIMの番号(ICCID番号)が通信の際の端末識別に使われるので、携帯本体のシリアル番号で回線接続をブロックする為には、追加のシステム構築が必要です。

今回の米政府FCCのリクエストで、AT&TとT-Mobile USAも盗難携帯のデータベースを作成し、それを他の携帯キャリアおよび全米の警察当局がアクセスできるようにすることに協力するものです。

スマートフォンの盗難は増えており、サンフランシスコ市内だけでも一日に6台の携帯が盗難にあっているという統計が出ています。
ニューヨークでは、2011年の1月から10月までの10ヵ月で26000件の電子機器の盗難が警察当局に報告されています。そのうちの81%は携帯だそうです。
現在、アメリカの犯罪件数で、現金の盗難件数よりも電子機器の盗難件数のほうが上になっています。
ワシントンDCでは、2007年に比べて2011年は携帯盗難件数が54%も増えています。

今回のデータベース作成により、このデータベースにシリアル番号が登録された携帯やタブレットは、各社の回線に接続出来なくなります。

4大キャリアがこの盗難・紛失携帯のデータベース・システムを完成し、その後12ヶ月以内に全米でこのデータベースがどこからでもアクセスできるようにする予定です。4大キャリア以外の地方キャリアも、2年以内にこのプロジェクトに参加する予定です。

盗難携帯のデータベースを作成し、盗難携帯の回線接続を自動的にブロックすることは既にイギリス、ドイツ、フランス、オーストラリアでも行われており、イギリスでは2002年から、オーストラリアでは2004年から実施されています。これにより、携帯盗難犯罪件数は減ったと言うことです。ロンドンだけを見ても、2011年度には1ヶ月約8000件ありましたが、2004年度の月10000件に比べると20%の減少です。この7年間にスマートフォンの販売が急激に増えていることを考えると、犯罪件数が20%減少したことは、大きな効果があったということがいえます。

この盗難データベースのシステムが完成すると、このべデータベースに登録された携帯は電話回線には使用できなくなりますが、WiFiでは相変わらず使えることになります。したがって、今回の処置は、WiFiオンリーのタブレットの盗難犯罪防止には役に立たないでしょう。WiFi+3G(4G)版タブレットは、このデータベースへの登録が行える予定です。

更にこのデータベースは、他国との同様なデータベースとも共有できるようにしていく予定だそうですが、発展途上国ではこのような盗難携帯のデータベースが存在しておらず、アメリカ国内で盗難にあったスマートフォンが中国・中南米・アフリカなどの米国外で販売される可能性は止められません。

また、携帯のシリアル番号を変更するプログラムなどもこれから再燃してくる可能性もあり、現在のアメリカの法律ではそれを罪に問うことは出来ないそうです。ただし、米国議会でもそれを禁止する法案は、提出が予定されているそうです。
イギリスでは既に携帯のシリアル番号を変更することは、法律で禁止されています。

今後、アメリカのeBayなどから中古のiPhone、スマートフォンを購入する際には、それが盗難・紛失報告が出ている品かどうかを確認し、十分な注意が必要になります。

ニュースソース:
Wall Street Journal:Carriers Band to Fight Cellphone Theft  - 2012年4月9日



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