アメリカ携帯電話、ポストペイド契約を選ぶ時の注意点。(新規、契約更新、または契約変更)




アメリカの携帯電話の相談は、良くあります。
「アメリカの『お勧め』の携帯電話会社は、どれですか?」と聞かれます。
そもそも「お勧め(Best)の携帯電話会社」が存在するとすれば、「お勧めじゃない携帯電話会社」も存在することになります。「お勧めじゃない携帯電話会社」へはお客は集まらないでしょう。ってことは、その会社は赤字になって、潰れます。
アメリカには全米規模(ハワイも、アメリカです)のサービスを提供している携帯電話会社は4社ありますが、それぞれ、それなりにビジネスになっている、ということは、4社とも、人によっては「お勧め」なのです。つまり、それぞれ長所・短所があるわけです。
だから、「お勧めの携帯電話会社は、どれ?」と質問されても、困ります。使う人の状況次第ですから。

以下、アメリカの携帯電話会社でポストペイド契約する場合の、選択の注意点です。

■1.そもそも、ポストペイド契約できるのか?

携帯電話のポストペイド契約は、信用商売です。毎月定額外の課金(例:国際電話発信やデータ通信超過、など)が生じる可能性があり、それを電話会社が後追いで請求し、利用者は「請求されたら、必ず払います。」と約束して契約します。

1.アメリカでは「信用=クレジットスコア(与信履歴)」であり、クレジットスコア(与信履歴)はソーシャルセキュリティ番号で管理されています。
したがって、
 - ソーシャルセキュリティ番号が無い人は、クレジットスコア(与信履歴)がありません。
 - クレジットスコア(与信履歴)が一定スコアよりも低い人は、審査落ちです。

例外:
● クレジットスコア(与信履歴)が無かったり、スコアが足りない与信落ちでも、保証金を支払えば、ポストペイド契約をしてくれるキャリアはあります。保証金はキャリアに1年間預けられ、その間に料金支払いの遅延などが無ければ、加入者がリクエストすれば、返金してもらえます。(自動的には戻ってきません。ただし、解約時にはそこから不足分を支払われた後の残額が自動的に戻ってきます。)保証金の額は一般に数百ドル($200-500)です。また、「保証金を払ったらポストペイド契約してくれる」キャリアショップは、携帯電話会社の直営店に限られます。フランチャイズ店や代理店では保証金の処理が出来ないので、この方法は取れないことが多いです。

なお、同じキャリアで3ヶ月~1年以上の契約を継続しており、その間に支払いの遅延が無い場合は、ソーシャルセキュリティ番号を持っていなくとも、そのキャリアでの過去の支払い記録を「与信履歴」とみなして、与信審査に合格することがあります。

● Verizonは「International Student Program」があり、パスポートとF-1 VISA、または、パスポートと留学先のStudent IDを提示すれば、保証金無しでポストペイド契約できます。
【Verizon】The Verizon International Student Program
● アメリカの大学によっては、AT&Tと提携し、保証金無しでAT&Tのポストペイド契約が出来る大学があります。各大学のホームページでチェックしてください。
【AT&T】International student deposit waiver program

2.アメリカ国内に「住所」が無いと、ポストペイド契約は出来ません。
本来、ポストペイド契約は、請求書を後追いで郵送するものですから、アメリカ国内に請求書を郵送できる住所が無ければ、ポストペイド契約は出来ません。
住所の証明は、口頭で伝えるだけで信用してくれる店員もいれば、住所の証明(アメリカ国内の運転免許証、住所が書かれた小切手、公共料金請求書、など)を要求する店員もいます。

上記条件を満たしている場合は、ポストペイド契約できます。

■2.ポストペイド契約がプリペイド契約に比べて有利な点、不利な点

ポストペイド契約がプリペイド契約に比べて有利な点は、以下のような点です。
 - 国際電話発信やデータ通信の超過分など、基本料金以外の利用を、前もって課金しなくとも使える。(あとで請求が来る。)(プリペイドは全て前払い制。)
 - アメリカ国外ローミングの利用が可能な利点がある。(プリペイドではアメリカ国外ローミングが出来ないのが原則。ただし、例外もある。)
 - アメリカ国内でも、過疎地で他キャリアや現地小規模基地局に超過料金不要で自動的に国内ローミングする。(プリペイドは国内ローミングが限定されている。)
 - プリペイド契約では使用できない特別サービスがある。(例:家族の携帯電話GPS位置追跡、Video-on-demandプログラム、など)
 - 端末を無利子・分割(最大24ヶ月)で購入できる。
 - 契約したい携帯会社が2年契約を提供していれば、端末を割引で購入できる。(iPhoneでは$450割引き。)

ポストペイド契約がプリペイド契約に比べて不利な点は、以下のような点です。
 - 通信料金とは別に、諸税(連邦税+地方税)が、地域によって最大14%位課金される。
 - 2年契約を結んだ場合、契約満期前に解約すると、解約料が発生する。(2年契約は、だんだん減っている。)
 - 新規契約時、または、端末アップグレード時に$35~$40のアクティベーション料を別途請求される。(特別プロモーションで無料になるときもある。)

■3.自分の生活範囲内、行動範囲内でのキャリアの電波の整備状態を調べる

いくら携帯電話会社に加入しても、自分の行動範囲内でその会社の電波の入りが悪ければ、意味がありませんよ。
サービスエリアは各キャリアのCoverageマップで調べられます。
【AT&T】Coverage Maps
【Verizon】Check your coverage
【T-Mobile US】Coverage
【Sprint】Coverage Check

また、会社によっては基地局と基地局の中間(ギャップ)で大きく電波の強さが落ちるところもあります。(特に、Sprintは注意。)

一般的には:
 - Verizonは全米どこでもサービスエリアが広いし、電波強度も安定している
 - AT&TもVerizonに次いで広い
 - SprintとT-Mobileは、過疎地での電波が弱い
 - Sprintは市内でも電波のムラがある

ちなみに、T-Mobile US、Sprint、AT&Tは、機種によってWiFi Calling(WiFi通話)が使用できます。これは、携帯会社の電波の届かないところでも、携帯がWiFiさえ繋がっていれば、電話も発信できるし、着信も受けられる、と言う機能です。WiFiさえ繋がっていれば、アメリカ国内の過疎地でも、または、アメリカ国外でも、アメリカ国内料金で発信・着信できます。(アメリカ国内電話番号同士の通話なら、無料です。)対応している端末は限られていますが、iPhone 6/6s以上なら間違いありません。

■4.アメリカ国内のサービスエリアを調べる

同じく、自分の生活範囲だけではなく、旅行や出張の多い人は、目的地での電波のカバーも調べましょう。
たとえば、グランドキャニオンではVerizonしか電波が使えません。それが大事な人は、その条件に適したキャリアを優先的に選ぶことになります。

■5.アメリカ国外のローミングの条件や料金を調べる

アメリカ国外、特に、日本へ一時帰国するときに、手持ちのアメリカ契約の携帯が訪問先で使えるかどうか、も、契約先選択時に考慮すべき注意点です。
たとえば、
 - T-Mobile USは超過料金無しで、日本を含む140カ国以上で、追加料金無しでテキストメッセージが使え、2G速度でデータ通信が使い放題です。(Eメールの送受信や、ツイッターのTLチェックや送信程度なら、問題無い速度。)(T-Mobile USの場合は、低速度データ通信の海外ローミングは無料で、自動加入となります。渡航前の加入手続きは不要です。)
 - Sprintも日本を含む58カ国で、追加料金無しでテキストメッセージが使え、2G速度でデータ通信が使い放題です。(Sprintの場合は、低速度データ通信の海外ローミングは無料ですが、加入(Opt-In)が必要です。Sprintのオンラインアカウント管理ウェブサイトで、オプションの加入ができます。)
Sprintがテキスト/2G速度データ通信の無料国際ローミングを開始。通話も安い。 - 2015年4月11日
 - - T-Mobile USもSprintも、加盟国でのローミング通話も、1分当たり$0.20と安いです。
 - - 2G速度で不満であれば、追加料金で高速(3G、LTE)データ通信に加入可能です。

 - AT&Tも、日本(他)での高速国際データ通信ローミング(LTEまで使用可能)が比較的安く加入可能です。
 - Verizonの国際ローミング料金は、4社中、一番高いです。

もちろん、
 - アメリカの契約SIMで国外ローミングする場合、電話番号はアメリカの電話番号のままなので、現地の人から自分の携帯に電話してもらう場合は、掛ける人に国際電話料金がかかり、不便です。
 - データ通信は、現地のSIMが安く、速度も速いでしょう。しかし、現地SIMを探す前に、アメリカのSIMのままで2G速度でEメールなどをチェックできるT-Mobile USやSprintの無料海外ローミングは、便利です。

・・・と言うわけで、日本を含む海外へ出かけたときに、現地SIMを入手する手間を掛けず、そのままで現地空港到着時から無料でEメールのチェックが出来るT-Mobile USやSprintのポストペイド契約は、便利ですよ。

そのほか、(AT&T、T-Mobile US、Sprintの場合は)カナダ/メキシコ、(Sprintの場合は追加で)南米諸国で、アメリカのデータ通信条件で通信できるプランも、これらの国に頻繁に渡航する人には便利でしょう。

■6.端末料金、支払い方法を調べる

「アメリカの携帯契約は、2年契約束縛あり」という話は、過去のものになりつつあります。現在、2年契約がまだ可能なのは
 - AT&T (新規、継続)
 - Verizon (継続のみ。新規は2年契約出来ない。)
 - Sprint (新規、継続。CEOは「2015年末までに2年契約を廃止したい」意向を表明済み。)
だけです。

契約束縛の無いポストペイド契約(Month-to-Month、No Annual Contract契約)は、
 - AT&T (新規、契約変更)
 - Verizon (新規、契約変更)
 - T-Mobile US (新規、契約変更)
 - Sprint (新規、契約変更)
で可能です。

2年契約をコミットすると、端末の購入が割引となります。iPhoneの場合は、$450割引になります。

端末を定価で購入すると、自動的に「Month-to-Month、No Annual Contract」契約となり、いつでも解約料無しで解約できます。
端末を定価で購入すると、2年契約に比べてAT&Tは毎月の通信料金が$15(月に10GBの共有データ契約をすると、月$25)割引になります。
端末を定価で購入すると、2年契約に比べてVerizonとSprintは毎月の通信料金が$15割引になります。

T-Mobile USは2年契約そのものが存在しないため、はじめから基本通信料金が他社に比べて割引になっています。

端末を定価で購入した後、その支払いを12ヶ月(10ヶ月)または24ヶ月(20ヶ月)無利子で分割払いすることが出来ます。(与信履歴チェックにパスする必要がある。)

■7.複数の端末を同時使用する場合には、共有プランやファミリープランの有無や条件を調べる

AT&T、Verizon、Sprintは、毎月のデータ通信を最大10台までのスマホ、タブレットやデータ通信専用端末(例:ポケットWiFiやゲーム機)で共有できます。(Shared Data Plan)
これらを共有するには、追加スマホ1台当たり月$40(端末を定価で購入した場合や、持ち込みの場合には、さらに$15割引き)、iPadを含むタブレットやポケットWiFiは月$10を追加で払います。

T-Mobile USは共有データプランが無いので、各端末ごとにプランを決めます。ただし、2台以上加入すると、2台目から毎月の通信料金が割引になります。また、データ端末(タブレット、ポケットWiFi)は最低月$10から加入できます。

ただし、iPadやポケットWiFiを頻繁に使用しない場合は、これらを共有プランに加入するよりも、スマホのプランだけにして、スマホからテザリングで使えば、毎月の追加料金は不要です。

■8.未使用データ通信バイト数の繰越し(ロールオーバー)

AT&Tは毎月のデータ通信の未使用バイト数を翌月(翌月のみ)に繰越しが出来ます。
T-Mobile USは毎月のデータ通信の未使用バイト数を将来12ヵ月まで繰越しが出来ます。
毎月の使用しなかったデータバイト数を繰越しすることにメリットを感じる人は、この2社を考えることですね。
たとえば、「毎月はデータが余る。年に1~2回旅行したときに、ロールオーバーしたデータバイト数を使いたい」と言う場合、T-Mobile USの12ヶ月ロールオーバーはありがたいです。AT&Tの1ヶ月ロールオーバーでも、無いよりはありがたいです。

■9.データ通信使い放題のあるキャリア

現在でもデータ通信使い放題プランを新規で提供しているのは、T-Mobile US(月$80)とSprint。ただし、どちらも21GB以上または同等のバイト数で速度制限があります。

T-Mobile USの場合は、高速バイト数制限あり(例:1GBプラン、3GBプラン、5GBプラン)の定額プランでも、その制限バイト数を超えた場合は2G速度(128kbps以下)で使い放題です。よって、バイト数に制限があっても、制限が達した後はゆっくりでも締め日まで使い続けられるプランなので、妥協できる人はこれでも良いでしょう。

AT&T/Verizon/Sprint(使い放題プラン以外)は、加入したバイト数を超えると、1GBあたり$15(1GB未満のプランでは、300MBあたり$20など、キャリアやプランによって違うので、注意して下さい。)で「自動的」に課金されます。追加課金されたくない人は、注意してください。

■10.最後に、毎月の合計料金を調べる

最後に、毎月の通信料金を各社の通信プランのシミュレーション(注文手順を途中までやってみる)して、比較して、比べます。

もちろん、アメリカの国内だけで使うし、自宅と会社や学校の周辺だけしか使わないのなら、上に書いた機能はまったく無視して、料金だけで決めたらよいでしょう。でも、一時帰国で日本に着いた瞬間、現地SIMを探さなくとも、Eメールは無料で使える・・・という事実は、なかなか捨てがたく、便利ですよ。



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「アメリカ携帯電話、ポストペイド契約を選ぶ時の注意点。(新規、契約更新、または契約変更)」への3件のフィードバック

  1. こんにちは。
    ブログの記事をいくつか読ませていただいて、豊富な知識量とわかりやすいまとめに感服しております。

    5月から家族6人でハワイへ移住するのですが、契約のキャリアなどご相談にのっていただけると嬉しいです。

    父はソフトバンクの契約のまま行くのですが、母と子供4人はアメリカのキャリアで契約しようと思っています。子供たちは最低2年はハワイにいる予定です。シムフリーのiPhone5sを日本から持っていきます。

    やはりポストペイドのファミリープランで契約した方がお得でしょうか?このような状況の場合、どのキャリアがオススメですか?また、別の方のページで、ファミリープランに加入するには最低一台iPhone6以降の機種が必要、との情報があったのですが本当でしょうか?

    私なりに情報は調べているのですが、どうも不安なので、詳しい方の御意見がいただけると大変嬉しいです。お返事お待ちしております。

    A Yoshida 返信:

    > 父はソフトバンクの契約のまま行くのですが、母と子供4人はアメリカのキャリアで契約しようと思っています。

    お父さんの電話番号は日本の電話番号のままでアメリカ国内でも使うのですね。
    お父さんが家族に電話するときは「アメリカ放題」であればお父さん側では追加料金無し(受ける家族も追加料金無し)で電話できますが、家族がお父さんに電話する必要がある場合は家族側は国際電話になります(受けるお父さんは追加料金無し)が、それでも良いのですね。

    >やはりポストペイドのファミリープランで契約した方がお得でしょうか?

    今年の1月からはアメリカ携帯会社全4社ともポストペイドでは新規加入では2年契約が無くなり、契約の束縛の無い月々契約になりました。また、AT&TとVerizonは「共有データプラン」と言って、データはデータ容量をどれか1プランのみ契約し、複数の携帯でこの容量を共有するプランに2-3年前から変わっています。Sprintもその後、それに追随しています。
    T-Mobileは毎月使用できるデータ容量はそれぞれの端末ごとに決まりますが、複数台をひとつのアカウントで加入すると、2台目以降から割引があります。(=ファミリープラン)

    SprintまたはVerizonに加入するためには、SprintまたはVerizonのバージョンの端末である必要があるので、日本でシムフリーiPhone5sを買ってアメリカに持ってくるのならば、SprintとVerizonには加入できません。

    AT&TとVerizonは、アメリカでの与信履歴が無い場合にはポストペイド契約できない場合があります。
    T-Mobile USは、アメリカでの与信履歴が無い場合には約1か月分の通信料金の保証金を前払いすることで契約をしてくれることがあります。

    与信履歴が無いためにポストペイド契約できない場合には、各社ともプリペイド契約があります。
    T-Mobile USは、プリペイドでも複数台数契約すると割引されるプロモーションがあります。

    あとは、自分の住んでいる場所または日常活動する場所で電波が強いキャリアを選んでください。

    https://blogfromamerica.com/?p=29624

    >また、別の方のページで、ファミリープランに加入するには最低一台iPhone6以降の機種が必要、との情報があったのですが本当でしょうか?

    嘘です。これが本当なら、アンドロイド使用のユーザーはファミリープランに入れないじゃあないですか。
    そもそも現在、家族割引(ファミリープラン)があるのは、「共有データプラン」を提供していないT-Mobile USだけです。

  2. ご丁寧にありがとうございます!
    とても参考になりました。

    そうすると、キャリアはAT&TかT-mobileの2択になりそうですね。選択肢が狭まって気が楽になりました!ありがとうございます(^_^)

    iPhone6の件、よく考えたらそうですね。わたしは6を用意しようかと思っていたのですが、5sで十分ですね。

    ありがとうございました!
    引き続き、ブログで勉強させていただきます。

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