iOS 8で採用予定のWiFi Callingの解説と、使い方


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さて、この秋(2014年9月?)リリース予定のiOS 8で採用されるWiFi Callingに付いて、もう少し詳しく解説してみます。
T-Mobile USのWiFi Callingが今秋リリースのiOS 8で実現予定 – 2014年6月3日
カナダのRogersもiOS 8のWiFi Calling機能に対応 – 2014年6月5日

WiFi CallingはアメリカではT-Mobile USが2007年から、Sprintが2014年2月21日より一部のWindowsスマホとアンドロイド・スマホにプレインストールしています。

WiFi Callingは簡単に言うと、「WiFiで接続しているところでは、SIMの電話番号を使って、国内通話として発信・着信が出来て、国内テキストとして発信・受信が出来る」機能です。

歴史的になぜT-Mobile USやSprintで採用されたかというと、これらのキャリアはAT&TやVerizonに比べると通信電波のサービスエリアが狭く、郊外で電波信号が弱かったり、まったく検知されないことが多いので、そういう場所でもWiFiさえ繋がっていれば携帯通話やテキストが使えるようにしようと、ということで開発された技術です。

また、T-MobileやSprintも低周波数(プラチナバンド)の電波使用権を2G/3Gで持っていなかったため、建物内に電波が伝わりにくく、屋内で電波が弱いところが多い、ということも理由です。

結果的には、WiFi Callingを使えば海外に居ながらにして国際ローミング料金を使わずに、国内料金、国内通話プランの条件内で通話やテキストが使える、というメリットもおまけに付いてきましたが、これは副次的なメリットだと思います。

更に、VoLTEが始まるとWiFi Callingは音声通話の「LTE回線から、WiFiへ」のオフロードにも役に立つ、という意見もあります。将来のニーズも見据えて、アップルはこの時期にiOS 8にWiFi Calling機能を追加したのでしょうか?

■ WiFi Callingは技術的には以下の図のように、携帯端末がUnlicensed Mobile Access (UMA)技術を使って、インターネット(WiFi)を経由してキャリアのバックボーン電話回線網へ接続します。また、セルラー信号とWiFi信号の有無や強弱によって、どちらの回線を使って接続するかを自動的に判断します。(※ 手動でどちらかを優先する、または、WiFiに限定することも可能です。)

携帯端末がWiFiを経由してインターネットに接続した場合には、キャリア(T-Mobile US)のセキュリティ・ゲートウェイ・サーバーに接続し、SIM認証(SIM番号、電話番号)でアクセス許可を得ます。
T-Mobile USの場合は、同社の加入者であれば、このセキュリティ・ゲートウェイ・サーバーで自動認証され、T-Mobile USの交換機に繋がって、通話やテキストが可能になるわけです。
WiFi Callingでは、セルラー電波には一切接続しません。
また、UMA認証された後は、通常のT-Mobileバックボーン電話回線網に繋がり、相手が固定電話であろうが、他社携帯電話であろうが、WiFi Calling機能の無い携帯電話であろうが、種類を選ばず、繋がります。
それだけでなく、WiFiが繋がっていて、WiFi Callingが有効(オン)になっていれば、WiFi Callingアプリ(OSの機能)が裏で自動的にUMAセキュリティ・ゲートウェイ・サーバーにアクセスして、ログイン(認証)を済ましているので、着信があった場合にはキャリアのサーバーは自動的にその通話をWiFi Calling(インターネット)に迂回して端末を呼び出します。したがってWiFi Callingでは「ライン電話」と違って、着信もWiFiで受けられます。
UMA認証(SIM認証)するためには、携帯に使用するSIMがGeneric Bootstrapping Architecture (GBA)認証対応のSIMでなければなりませんが、キャリアが現在使用しているSIMはほとんどがこれに対応しています。

この図を見て判るように、この図の右下にある「UMAセキュリティ・ゲートウェイ」をキャリアが導入しなければ、WiFi Callingはそのキャリアで使用できないことになります。

■ では、実際にT-Mobile USの現在のWiFi Calling機能はどのように使用するのか、WiFi Calling対応のT-Mobile USアンドロイド携帯で試してみます。

まず、WiFi CallingはSIMの電話番号を使って通話やテキストの発着信をしますので、通話契約中のSIMが端末に挿入されていないと使用できません。データ通信SIMでもダメだし、契約切れたSIMでもダメ。もちろん、SIM無しではWiFi Callingは使用できません。

WiFi Callingが使えるT-Mobile USの端末は筆者は古いアンドロイド2.2モデルしか持っていないのですが、これらのモデルではWiFi Callingアプリがプレインストールされています。
 

これを起動すると、WiFi Callingを「有効(ON)」または「無効(OFF)」に切り替えられます。
一度「有効(ON)」にすると、電源を入れ直したり、携帯をリセットしても、(次に「無効(OFF)」に切り替えるまで)常にWiFi Callingは「有効(ON)」です。
また、WiFi Callingが「有効(ON)」のときは、ステータスバーにWiFi Callingのアイコンが表示されます。

ステータスバーを指で下へなぞると、通知エリアの詳細にもWiFi Callingのステータスが表示されています。

新しいアンドロイドOSでは「設定(Settings)」アプリに組み込まれていて、「設定(Settings) ⇒ ワイヤレス&ネットワーク(Wireless&Network) ⇒ その他(More)」をタップすると、

WiFi Callingの「オン/オフ」が選択できるようです。

さらに、WiFi Callingアプリの「設定(Settings)」をタップすると、

詳細設定メニューがあり、ここで「Connections Preference(接続優先)」をタップすると、

●「Wi-Fi Preferred(WiFi Calling優先)」
●「Cellular Preferred(セルラー電波優先)」
●「Wi-Fi Only(WiFi Callingのみ)」
の選択が出来ます。
この設定で、WiFiがとセルラーの両方の信号が繋がっているときに、どちらを使うかが決められます。
WiFi優先設定の場合、WiFiの質(通信速度)をチェックしてくれて、速度が遅い場合にはWiFi信号が検知されてもセルラーを選ぶのか、・・・までは判りませんが、それは、端末アプリ側の機能インプリメンテーションの問題ですね。

「Wi-Fi Only(WiFi Callingのみ)」の選択の場合にはWiFiでしか通話が出来ないので、海外旅行中に通話料金の高いセルラーローミングを間違って使用することを防ぎ、WiFiが繋がっているときだけ(海外に居ながら)国内通話料金で通話したいときに、便利ですね。

さて、WiFi Callingの「オン」設定で、WiFiに繋がっていれば、

通話も発信でき、

着信も受けられます。
電話番号入力は、普通の電話アプリで行います。上に書いたWi-Fi Callingの設定と、WiFiに繋がっているかどうかで、どちらの回線に繋いで通話をするかは自動的にアプリ(OS)が決めてくれます。

ひとつだけ「えっ?」と考えさせられたのは、「機内モード オン/WiFi オン」では、WiFi Callingが有効(オン)設定でも、通話は出来ません。

「おかしいじゃん?」を最初に思ったのですが、考えてみると「機内モード オン」は着信をすべて拒否して静かな時間を作りたいときなどにも使うので、それを考慮して「機内モード オン」ではセルラー/WiFi Callingに関わらず、すべての通話をブロックするようにソフト(アプリ、OS)側でインプリメントしているのだと思います。
そうしないと、全通話を拒否する設定が、無くなりますからね。
 

 

ついでに、SIMを端末から抜いた時のWiFi Callingのステータス画面は、こんな感じ。「Invalid SIM」と表示され、WiFi Calling機能は使えません。

WiFi Callingの通話料金は、発信も着信もセルラー電波を使用したときの国内通話料金やプランが適用されます。
これは、回線バックボーンで他社回線への接続料などがかかるので、仕方が無いですね。
「かけ放題」プランに加入していれば、基本料金だけで、追加料金無しでいくらでもWiFi Calling出来ます。

WiFi Callingがどのように機能するのか、判っていただけたでしょうか?

追記:
その後わかったことですが、カナダのRogersとイギリスのOrange UKは、海外からのWiFi Callingは(ジオ・ブロックで?)禁止しているようです。T-Mobile USは海外からの使用を許可しています。
そういうインプリメンテーションも出来るんですね。
【WiFiCalling.net】What is Wi-Fi Calling



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