SprintがT-Mobile USを買収する際の株価に、ソフトバンクとドイツテレコムがほぼ同意


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Bloomberg誌が本日遅くに報道した内容によると、
【Bloomberg】Sprint, T-Mobile Said Near Accord on Price, Termination Fee - 2014年6月4日
【CNBC】Sprint close to agreement on terms to buy T-Mobile -report - 2014年6月4日
Sprintの親会社のソフトバンクと、T-Mobile USの親会社のドイツテレコムは、SprintがT-Mobile USを買収する際の株価にほぼ同意したとのことです。Sprint/ソフトバンクはT-Mobile US株1株あたり$30台後半、ドイツテレコムは最低$40を要求していましたが、暫定的に同意した額は1株約$40弱(almost $40)と報道されており、ドイツテレコム側の主張が通った形になります。この額は、本日のニューヨーク証券市場の終値$34.28を約17%上回ります。
買収総額は約310億ドルになります。

また、Sprintはこのうち50%をT-Mobile US株主にキャッシュで、残りを新会社の株に交換することで合意したようです。
T-Mobile USにはこれとは別に約145億ドルの負債があり、55億ドルのキャッシュを保有しています。

これらを加えると、SprintのT-Mobile買収額は約400億ドルになり、Sprintは約245億ドル(約2兆5000億円)~300億ドル(約3兆円)の買収資金を必要とします。(約155億ドルは新株の発行。)

これが実現すると、ドイツテレコムは新会社の約15%株主となります。

まだ未決着の内容は
● 合併後の経営体制(現T-Mobile USのCEOのJohn Legere氏とその経営チームが新会社経営の主導権を持つ案が有力、と報道されています。)
● アメリカ規制当局の反対にあってこの買収が認可されなかった場合の違約金(Breakup Fee)の額(ドイツテレコムは30億ドルを要求し、ソフトバンクは10億ドルの支払いを容認しているようです。一部の報道では、10億ドルで合意済みとの報道もあります。)
のようです。

Sprint/ソフトバンクは金融機関6行と、買収に必要な融資の事前相談をしているようですが、最終的な契約はまだ行われていない、とメディアは報道しています。

また、Sprint/ソフトバンクとT-Mobile US/ドイツテレコムはお互いにDue diligence調査を行っていないため、最終合意に達すれば相互調査を行う必要があります。

したがって、まだ買収契約を発表する段階ではなく、買収発表は早くとも7月になるとBloomberg誌はレポートしています。

買収提案発表後、FCCと司法省の認可調査を受けますが、この調査には約6-12ヶ月掛かります。その間、両社はこれまでと同じように別々の会社として事業を継続します。

FCC、および、独占禁止法関連を調査する司法省は今年(2014年)1~3月にこの買収(合併)に反対する意思を表明しています。ソフトバンクの孫社長は、AT&Tが衛星TV業界第一位のDirecTV買収を2014年5月18日に発表したことを受け、これをもしFCC/司法省が認可すればAT&Tはさらに大きくなり、事業規模でAT&TとVerizonに大きく差を付けられているSprintとT-Mobile USの事業存続のために両社の合併を容認しなければならない状態になった、と考えているようです。今回、SprintがT-Mobile US買収提案に踏み出そうとしているのは、それが大きな要因のようです。

また、SprintとT-Mobile USは2015年に予定されている600MHz周波数の使用権の入札に、既に700MHz帯域の周波数を広く保有しているAT&TとVerizonの参加を禁止するようにFCCに求めていましたが、AT&TとVerizonの主張も認め、先月15日のFCCの投票で妥協案として、一部をAT&T/Verizonに入札させないことに決めました。しかし、一部は4社を含めた公開入札となるため、資金力の弱いSprintとT-Mobile USは資金的に落札出来ない予想もたっており、この入札に勝つためには両社の合併が必要、という説得もしてくるでしょう。

FCC委員会は5人の委員から構成されており、2人は共和党でSprintとT-Mobile USの合併に同情的です。3人の民主党委員のうちJessica Rosenworcel氏は最近のコメントで、SprintとT-Mobile USの合併案に対して「先入観を持たずに耳を傾けたい」と話しており、この委員の意見を傾かせればSprint/T-Mobile USへ有利に働く、という観察も影響しています。もっとも、司法省の見解はまったく変わっていないようです。

Sprintは前FCC委員長のチーフ・コンサルタントを務めたBruce Gottlieb氏を2014年3月に法務・規制当局担当に雇い、ソフトバンクがSprintを買収する際にロビー活動を支援していたCarmen Groupのロビースト4人を含め、ワシントンDCの政治家へのロビー活動を行っています。2014年最初の5ヶ月で約100万ドルのロビー経費を計上しており、2013年は350万ドルをロビー活動に費やしました。
【Forbes】Softbank Courting Washington As Sprint Eyes T-Mobile - 2014年5月29日

ドイツテレコムとの協議はまだ最終的に合意したわけではなく、8月までに最終合意に達しない、または、規制当局の反対が確実と判明した場合には、買収(合併)提案は2~3年先送りされ、次の大統領選挙で両社の合併に同情的な共和党政権が生まれることを期待する、との観測もあります。

追加分析:
【NASDAQ - Dow Jones Business News】Sprint, T-Mobile Move Closer To A $32 Billion Merger — 2nd Update - 2014年6月4日



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