SprintのT-Mobile US買収計画に、更なる壁が立ちはだかる


- Old Counter



Sprint会長の孫氏の思惑とはかけ離れて、T-Mobile USの躍進は続いており、その影響はAT&TとVerizonにも通信料金の値下げや加入者減などという現象で現れています。
よって、一人負けのSprintは、まず、LTEサービス補強を推進して、自社の立て直しを計らない限りは、T-Mobile US買収提案も出来ないどころか、1-2年のうちに第3位から第4位へ転落することも有り得るでしょう。

さて、Sprintは昨年7月初めに2.5GHz周波数帯域の使用権を持つClearwireを完全子会社化して、この周波数の利用を自由に決められるようになりました。
Sprintは2.5GHz周波数帯域を120MHz幅で、ほぼ独占状態で所有しています。この2.5GHz帯域を含めたアメリカ携帯各社(プラス、衛星放送会社Dish)の携帯電波の、トータル周波数幅を比較したのが、次の表です。
【FireceWireless】Verizon says FCC can’t ignore Sprint’s 2.5 GHz licenses in spectrum screen – 2014年2月7日

つまり、
● Sprint 203MHz幅 (2.5GHzの120MHz幅を含む)
● AT&T 129MHz幅
● Verizon 104MHz幅
● T-Mobile US 71MHz幅

この状態で、SprintがT-Mobile USを買収すると、買収後のSprintの周波数使用幅は274MHzとなり、AT&TやVerizonの2倍~2.5倍となります。

これでは、新Sprintの電波使用権が独占状態となります。

・・・ところが、これまでこれが問題にならなかったのは、2.5GHz高周波数帯域はこれまで「携帯電話電波としての使用に不適当」と分類されていたため、SprintがAT&TやVerizonと競争力を論ずる際に、2.5GHz 120MHz幅は無視して議論できたのです。つまり、孫氏は「うちは、T-Mobileを買収しても、合わせて154MHz幅にしかならないから、AT&TやVerizonに比べても所有周波数幅は顕著に多くない。」と主張できたわけです。したがって、電波幅はT-Mobile US買収計画の障壁にはならなかったのでした。

これが、もうすぐ変わりそうです。

FCCは、Verizon社などからの苦情を受け、2.5GHz帯域も俗にspectrum screeと呼ばれる「携帯通信に利用可能な電波」として扱うことを決めたようです。最終決定は、2014年5月15日の委員会で行われる予定です。
【FireceWireless】FCC to add Sprint, Dish spectrum to spectrum screen – 2014年4月25日

これが決定すると、Sprintは他社に比べてはるかに多くの利用可能な周波数帯域を既に持っていることになり、新たな電波の使用権の入札への参加を制限されたり、他社(=T-Mobile US)を買収する提案を行う際に、一部の周波数のAT&TやVerizonへの売却を強制されることが考えられます。

当然Sprintとしてはこれは自社にとって不利になるので、FCCへのロビー活動を強化してくると思うのですが、さて、どうなるでしょう。



――<●>――
関連すると思われる記事: