アメリカの携帯業界は「4社競争」状態ではなく、「2+2競争」状態である。


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SprintによるT-Mobile US買収の資金が、銀行や証券会社によって準備が進んでいる噂が流れて2014年2月5日午後に株価が約7~8%の急上昇したSprintとT-Mobile US株ですが、同日夜、この買収が政府認可当局に認可される可能性が低いというアナリストニュースが相次いで流れ、翌2014年2月6日は両社株とも急下落。結果的には両社株とも、噂前の2014年2月5日午前の株価レベルに戻っています。

Sprint/T-Mobile USの合併が現在の状況では認められにくい状況の一つとして、アメリカ政府司法省およびFCC通信委員会の立場が、「アメリカの携帯業界は、現在、GSM/W-CDMAキャリア2社 + CDMA2000キャリア2社」で競争を続けるのが望ましい、という立場をとっていることにあります。
「2+2」競争体制は、2011年のAT&TによるT-Mobile USA買収時の審査(最終的に反対意見)で司法省が示した態度であって、その後2年間で、この方針がまだ大きく変えられるほどの携帯業界の大変化は、アメリカには起こっていません。

つまり、
● GSM/W-CDMAキャリア = AT&T、T-Mobile US
● CDMA2000キャリア = Verizon、Sprint
です。一部に「4社競争を、3社競争に会社の数を減らし、第3位と4位が合併することによって、トップ2社と資金的にも加入者数的にもほぼ同等にすることによって、より競争の土俵が均等化する」という議論があるようですが、アメリカの携帯業界の流れを見ている筆者には、「2+2競争」をまだ方針として堅守しているアメリカ政府司法省/FCCを説得するには、「4社⇒3社競争」理論はまだ説得力が弱いと思われます。

「2+2競争」理論の裏には、
● GSM/W-CDMAキャリアは端末の相互互換性がある程度あり、海外ローミングや、海外からの訪問者の所有する携帯の米国内ローミングに対応可能
● CDMA2000キャリアは、国内通信のみの競争
という立場から、「AT&T vs T-Mobile US」の競争と「Verizon vs Sprint」の競争を、アメリカ司法省/FCCは「多少、違う競争」と見ているからです。
アメリカの携帯業界と、最近アメリカン航空とUSエアウェイズの合併を認めて3大航空会社競争の状況を作ったアメリカ航空業界の違いは、そこにあります。

LTEが普及して、このGSM/W-CDMAキャリア間競争と、CDMA2000キャリア間競争の区別は、重要性が減ってきていることは事実です。しかし、まだ音声通信は3G(GSM/W-CDMA、または、CDMA2000)を使用している現実と、LTEのカバレッジが全米隅々まで届いているとは言え無い(特にSprintとT-Mobile US。その中でも特に、Sprint)現状から、司法省/FCC担当者に「2+2競争」原則の考え方を捨てさせて、「4社競争を3社競争に減らすメリット」を説得するのは、筆者から見ても「時期尚早」と思われます。

時々筆者がこの件(SprintとT-Mobile USの合併)に関して「1年早い」と言っている理由は、ここにあります。

既に全米規模(人口カバー率)でLTE整備をほぼ終えたVerizonとAT&TがVoLTEを今年中に開始し、Verizonが3G CDMA2000の帯域を減らし、一般ユーザーの日常の携帯使用のCDMA2000回線への依存度が減り、将来のCDMA2000停波(Verizonは暫定的に2021年にCDMA2000の停波を計画している。)に向けて準備を進めると、CDMA2000通信モードの携帯会社間の競争は消滅します。
そのときに初めて司法省/FCC関係者の頭の中からは「2+2競争」の考え方が消滅し、「4社競争」または「4社⇒3社同等競争」の土俵を受け入れようという考え方になります。

従って、3Gで異なる通信方式を採用しているSprintとT-Mobile USの合併認可は、現状では難しいのです。

もっとも、Sprint(孫会長)としては「(今は一人負けなので、)3G CDMA2000での競争は諦めた。だから、T-Mobile USと合併させてくれ。そうすれば、LTEでVerizon/AT&Tと同じ土俵で競争出来る。」と言う主張をしたいでしょう。でも、そういう負け組みの主張は、Sprintが余程窮地に立たされない限り、お役所には受け入れられないと思います。この主張が受け入れられる時といえば、Sprintが破産宣告をしなければならないほどに資金的に緊迫した状態になった時だけでしょうね。
特に、AT&Tの規模に対し「脱キャリア」戦略で過去1年で400万人の加入者純増を達成し、AT&TやVerizonを価格競争に巻き込んでいる、Sprintより規模の小さい第4位のT-Mobile USの最近の活躍を横目で見て、逆に年間数百万人の純減のSprintが「規模が小さいと、競争に勝てない」と規制当局に泣き入っても、「T-Mobile USが改善できて、あんたたち(Sprint/ソフトバンク)が改善出来ないのは、どうして?」と反論され、Sprintの主張はまったく相手にされません。

そもそも、司法省がソフトバンクによるSprint買収を認可したのは、破産ぎりぎりの状態のSprintにソフトバンクが資金注入して立て直すという可能性を、ソフトバンクの買収提案に見出して認めたからでしょう?

だから、まずは、ソフトバンクとしては、Sprintを建て直し、SprintのLTEを(たった12都市だけの高速SPARK LTE提供していることを自慢してないで)人口カバー率で全米規模まで広げることが先です。

そして、3G CDMA2000が無くともLTEだけで他社と競争できるようになったら、やっと司法省/FCCの考え方を「2+2競争」から「4社⇒3社競争」方針に変えさせる説得力を持ってきます。
今の時点で孫さんの主張がアメリカ認可当局にはまともに受け止めてもらえない理由は、それです。

だから、SprintによるT-Mobile US買収提案は、1年早いんです。



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