孫・Hesse(Sprint CEO)が今度はアメリカFCC委員長と会談:FCCも「SprintによるT-Mobile US買収」認可には懐疑的


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ソフトバンク会長 孫 正義氏とSprint CEO Dan Hesse氏は昨日(2014年2月3日)、アメリカFCC(連邦通信委員会)の委員長Tom Wheeler氏と会合するとの報道が、昨日朝、いくつかのアメリカのオンライン報道で報道されました。

その後、数時間前、その会合の内容がReutersによって報道されています。
【Reuters】FCC chief tells Sprint chair he is skeptical on T-Mobile deal – 2014年2月3日

ここでも先月のニュースで報道されたアメリカ司法省独占禁止法関連担当者が示したと同じく、FCC委員長も、「SprintによるT-Mobile US買収」の認可に懐疑的であることを孫/Hesse両氏に示した、とFCC内部からの情報として報道しています。ただし、Sprint側からのT-Mobile US買収の公式提案があれば、その内容については偏見の無い調査を行う、と伝達しています。

Sprintは、それぞれ2倍以上の加入者を持つ「VerizonやAT&Tと平等に戦うには、規模的にSprintやT-Mobile US独自では難しく、SprintとT-Mobile USが合併しなくては不可能」、と主張すると見られていますが、
● 昨年(2013年)3月から「Un-Carrier(脱キャリア)」をスローガンにしていくつかのキャンペーンを実行している業界4位のT-Mobile USが、四半期ごとに100万人規模の加入者増を達成しており、このままのペースで行くと1年以内には加入者数でSprintを抜いて業界3位になりそうなこと
● Sprintは昨年7月初めに完全買収したClearwireの周波数帯域を含めると、既にVerizonやAT&Tの2倍の周波数帯域の使用権を持っているので、周波数ではVerizon/AT&Tより優位にあること(なのに、それをまだ全部利用していないこと)
から、余ほど奇抜な提案でT-Mobile US買収案を出さないと、独禁法からみで司法省の許可が得られず、電波の使用と消費者保護がらみでFCCの認可が得られないと見られています。

可能性のある一つの案としては、日本でのイーアクセス(イーモバイル)買収のときと同じく、Sprintが一旦T-Mobile USを買収した後、一部の事業をスピンオフさせる案も有り得る、と一部では推測されています。

Sprintは2014年2月11日に2013年10-12月期の四半期業績の発表、ソフトバンクは日本で2014年2月12日に同じく2013年10-12月期の四半期業績の発表を予定していることから、ソフトバンク会長の孫氏はその際にSprint/T-Mobile US買収に関して何らかの発表を行うか、または、記者等からの質問があることを前提に、進展に対してコメントできるように、各方面への打診を急いでいるような気がします。

また、ソフトバンクとドイツテレコムは買収提案の内容に関して詳細を交渉しているという報道も既に流れていますが、アメリカ政府関係当局の認可の可能性が低ければ低いほど、ドイツテレコムはソフトバンクに対して「買収提案が認可されなかった場合のBreak-up Fee(手切れ金)」の金額を多く要求する可能性があります。2011年に政府当局の認可が降りず、AT&TがT-Mobile USの買収を諦めた際には、AT&TはT-Mobileに対して30億ドルのBreak-up Feeの支払いと、一部の周波数の譲渡を行っています。

Sprintは負債が多く、もし、T-Mobile US買収案が認可されなかった場合に、多額のBreak-up Feeを支払うと、経営への影響は大きいと推測されています。

■ 携帯ポストペイド月料金が、$40-45レベルに落ちてきた

別の業界の流れとして、今年(2014年)に入って更に激化しているT-Mobile US、AT&T、Sprintの通信価格競争は昨日、AT&Tが「月10GBまでの4回線Family共有プランで、月$160(1台当たり月$40)」と、ポストペイドの月通信料が「通話使い放題・テキスト使い放題・データ制限あり」で1台平均月$40~45のレベルに落ちてきています。
AT&Tは既に2013年12月から、1台契約の場合でも、2年契約束縛無しで、端末を定価で購入し、端末代を20ヶ月/26ヶ月割賦払い(Nextプラン)選択した場合、月に$15の通信料割引を実施しており、「月300MBまでのデータ通信を含んだ通話使い放題、契約束縛無し」のエントリー料金は月$45(従来、月$60)に下がっています。同じくVerizonも2014年1月28日より期限付き(終了日未発表)で、「月250MBまでのデータ通信を含んだ通話使い放題、契約族縛無し」を月$45で対抗しています。
【DroidLife】Verizon Launches Limited Time $45 Plan With Unlimited Talk, Text, and 250MB of Data (Updated) – 2014年1月28日
【DSLReports】[Verizon] Anyone had success with new $45 Verizon plan? – 2014年1月30日

これらのポストペイド低価格競争は、従来の2年契約と違って、
● 契約は、長期束縛無し(いつでも解約できる)
● その代わり、端末の割引無し(端末は、定価で買う。希望により割賦支払いオプションは、ある。)
● 端末代の支払いは、割賦払い
となっており、注意が必要です。

しかし、キャリアの価格競争が今後更に激化することが予想され、これにより、各キャリアの業績(利益)に影響が出てくることは確実視されています。
そうなると、Sprintとしては今後の業績悪化が更に著しくなると予想され、一部の投資ニュースでは、Sprint株の値下がり予想に基づくショート戦略を推薦しているサイトも見られます。
【Seeking Alpha】Short Sprint As AT&T Cuts Prices – 2014年2月4日

AT&TとVerizonは既に四半期業績発表を済ませており、
● AT&Tは2013年10-12月期四半期のポストペイド契約加入端末増は、56万6000台
● Verizonの2013年10-12月期四半期のポストペイド契約加入端末増は、160万台
● T-Mobile USの2013年10-12月期四半期のポストペイド契約加入端末増は、86万9000台(決算発表前事前集計)
となっており、Sprintは2014年2月11日の四半期業績発表では4大キャリアで唯一、数十万台単位での加入端末純減を発表することが予想されています。

これらの業績報告からも、4大キャリアで唯一、「一人負け」が続いているSprintが、「T-Mobile US買収案」をアメリカ司法省およびFCCに説得するには、余程の想定外の案を提案しないと、難しいと思われます。



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