TSAロックのトラブル体験談・・・TSAロックは、掛けないほうが良い!


- Old Counter



このブログ訪問者には日米間の航空機利用者が多いと思います。

9・11テロ事件以来、アメリカ発着航空旅客者の預け入れ荷物(スーツケース)は、鍵をしないか、鍵をする場合にはTSAロック(アメリカTSA認定ロック)を使うことが義務付けられているのは、皆さんご存知ですね。

「(アメリカ政府認定なので)TSAロックをすると、安心だ」と思うでしょうが、そうではない事を実際に体験しましたので、皆さんの参考にしてもらうために報告します。
まあ、「安心」の種類が違うんですけどね・・・

最近、航空機の預け入れ荷物の重量制限も厳しく、国際線一般エコノミークラスでは50ポンド(22キログラム)を超えると重量超過料金を徴収されるか、別の荷物か箱に分けるように要求されますね。日系航空会社ではチェックイン時スーツケースが重量超過すると、無料で段ボール箱をくれて、「小分けしてください」と言われることもあります。

そんなときにSamsoniteやRimowaのような超軽量スーツケースは、便利ですね。
なにせ、普通のスーツケースは本体だけで13~15ポンド(6~7キログラム)位の重量があるのに、SamsoniteのCosmoliteは本体7.5ポンド(3.4キログラム)。つまり、3キログラム余分に荷物が入れられることになります。
普通のスーツケースで「このお土産や買い物を入れると、大丈夫かな~、重量超過しないかな~」と重量制限ギリギリ前後で不安なとき、SamsoniteやRimowaなら大丈夫。不安が一つ減ります。

 

実際にスーツケース本体の重量を測ってみました。

普通の布製スーツケースと、その本体の重さ、13.25ポンド。(単位=ポンド)

 

 

Samsonite Cosmoliteの本体の重さ、7.50ポンド。(単位=ポンド)

 

しかし、Samsonite CosmoliteのTSAロックは、スーツケース本体に付いています。

 

TSAロックは、スーツケース所有者は設定した数字のコンビネーションに合わせ、写真TSAロックの下端のプッシュバーを押すと、スーツケースのファスナーの引き金の穴を通している部分のロックが解除され、ファスナー引き金をロックから外してスーツケースを開けます。

 


 


 

ロックされている状態ではこのプッシュバーは押せないので、ファスナーの引き金の穴がTSAロックにロックされたままで、スーツケースを開けることが出来ない、という仕組みです。

(TSAロックがどういう仕組みか知らない人のために・・・)空港のセキュリティー担当職員は写真のTSAロックの上部の丸い鍵穴に持っている鍵を入れて回すと、数字のコンビネーションを知らなくとも、スーツケースのファスナー引き金を止めている鍵が開くという仕組みですね。

 

カバン修理屋さんの話だと、TSAロックはTSA001からTSA011位まであって、それぞれTSAが使う鍵の形は違うそうです。
SamsoniteのCosmoliteにはTSA002のロックが本体に付いています。TSA002のロックには、TSA002用の鍵が必要になります。
このTSA鍵は、空港のTSA職員だけが持っています。一般の人はこのTSA鍵を持つことも、購入することも、許されていません。

さて、筆者は11月に日本へ行くときにこのSamsonite Cosmoliteで荷造りし、いざTSAロックを閉めようとしたところ、ロックが掛からないことに気が付きました。

つまり、どんなにコンビネーションダイヤルを回して変えても、常にロック下端のプッシュバーを押すことが可能で、ファスナーの引き金をTSAロックに止めることができません。

 

これを発見したときは翌朝出発する、その前夜だったので、「このTSAロックは、(以前の旅の時に)TSA職員に壊されたな・・・」と思いながらも、修理は帰ってからということにして、スーツケース用ベルトを付けて今回はしのぐことにしました。

 
 

さて、1週間の旅から帰り、「このTSAロックは、もう、壊されて使えない。」と思い込んでいたので、交換できるものなら交換したいと思い、まずはTSAロックが本体にどういう方法で付いているのかを調べます。

そうしたところ、これはただ単にスーツケースの内側から2つのねじで留められていることが判りました。

 

そこで、まずはこれを外します。ねじ穴は普通の「+」や「-」ドライバーではありませんでした。いわゆる「T-2」ねじと言うやつで、ねじの頭の穴は六角形の穴になっています。

 

このねじを回して外すには、「T-2」ねじ回しが必要です。

 


 

「T-2」ねじ回しさえあれば、簡単にこのねじは外れました。

 

ユーザーが簡単に外せるくらいだから、替え部品として簡単に入手できるだろうと思って、Samsoniteのカスタマーサービスに電話してみたら、それからが大変。

カスタマーサービスはTSAロックが壊れたことに同情してくれて、一生懸命、部品データベースを探すも、「その部品は、修理部品としては売られていない。」という結論になり、代わりに近くの認定修理屋(とは言っても、車で片道40分は掛かるところ)を紹介してくれて、「そこなら修理部品として持っているかもしれないから、売ってくれるかもしれないので、連絡するように。」とのこと。

「えっ? こんな簡単に一般ユーザーが外せる部品(TSAロック)が、修理部品としては売ってくれないなんて、どういうことか!?」と憤慨しながら、修理屋にまずはEメールしてみることに。

その結果「いや、うち(修理屋)もそれは部品として入手は困難。また、Samsonite軽量スーツケースCosmoliteはヨーロッパで製造されていて、その部品はヨーロッパに発注しないといけない。Samsoniteヨーロッパ工場は対応が遅く、前回部品を注文したときには4ヶ月掛かってようやく送られてきた。」という回答。
しかし、「幾ら位するか?」と言う質問には、「手元にあれば、TSAロックそのものは$10-20で販売可能。プラス、送料手数料$7.50。」ということで、(スーツケース本体は$300位した割には)修理部品としてのTSAロックそのものはそんなに高くないので、まずはひと安心しました。

ついでに(理由は下に書きますが・・・)、修理屋さんに「スーツケースの修理のために、お宅ではTSAキー(鍵)は持っているんでしょう?」と聞いたら、「いや、うちも持っていない。」との返答。一般人がTSAキーを持てないのは理解できますが、業界の人は許可があれば持てると思ったら、それも出来ないとのこと。鍵専門店(Lock Smith)も、TSAキーは持っていないのかな・・・

そうこうやり取りしていると、数日後、「たまたま中古の修理不可能な壊れたSamsonite Cosmoliteスーツケースが手に入ったから、そのTSAロックを譲れる。中古部品だから、TSAロックの値段は半額の$7.50で良い。それに送料手数料$7.50を加えて、総額$15でどうか。」とタイミング良く(?)メールが来たので、早速それを購入することにして、郵送してもらうことになり、一件落着となりました。

なんと、一般人がこんなに簡単にきれいに外せる部品が、こんなに入手不可能だなんて、知りませんでした。
 
 

■ 今回のTSAロックは、どのように壊れたのか?

さて、出発前夜に「TSAロックが掛からない」ことに気がつき、「これはTSA職員の乱暴な扱いに、修理不能なほど完全にロックが壊されてしまった。」と思い込んでいたので、ついでにこのTSAロックの内部を開けてみて、「どのように壊れたのか」を調べてみることにしました。

TSAロックの裏のねじを緩め、

 

内部を見てみます。
写真に追加した黄色い線は、この部分に填っていた金属バネ(細いピアノ線製)を示しています。
1時間ほどいじっていて、その間に何度か組み立てたり、元に戻そうとしたりしているうちに、飛んでいってしまい、見つからなくなってしまいました。

 

結果的に判ったのは・・・

本来、TSAロックのTSAキーを差込む鍵穴は、下の写真のように縦になっていなければならないのに、

 

筆者のTSAロックが閉じなかったときには、この鍵穴が横位置になっていて、そこでStuck(動かない)状態になっていたので、ファスナー引き金を留めるバーがコンビネーションロックの数字に関係無く、常時開いてしまう、という状態だったことが、あとで判りました。

 

結局、こんな事がまた起こったら「この鍵穴にTSAキーを差し込んで、ガチャガチャやっていれば、きっと直るんじゃあないか?」と思い、修理屋さんに「TSAキーを持っているのか?」と聞いたら、「我々も、持っていない。」と言う返事でした。
「じゃあ、こう言うときにはどうしたらよいのか?」と聞いたら、「そういうトラブルに気付いたら、空港でTSA職員を見つけて、TSA鍵を差し込んでもらって、直してもらうしかない。」との話でした。

いや、参りました。
普通、空港で荷物受け取ったときに、「その場でスーツケースを開けてみよう」と思うことって、少ないじゃあないですか。家に帰るまで開けないことのほうが多いですよ。

そういう時にはどうすりゃいいんでしょう?
もう一度スーツケースを持って、空港へ行けってか?
勘弁してよね。

まあ、修理屋さんの話だと「TSAロックが壊れたくらいは、運が良い。中にはTSAが、そのTSAロックに合うTSA鍵を持っていなくて、チャック部分の布をナイフで切られる人もいる。」と言うことです。(最初に書いたように、TSAロックのキーは001番から011番位まであるそうで、スーツケースに付いているTSAロックの番号の鍵をTSA職員がたまたま持っていないこともあるらしいんです。)
 
 

■ 最近は航空会社も、チェックインカウンターに「預け荷物にはTSAロックを掛けないでください。」と注意書きを貼っている。

そういえば、11月の日本への旅で気が付いたのですが、成田のユナイテッド航空のチェックインカウンターには「預け荷物にはTSAロックを掛けないでください。」という張り紙がしてありましたね。

こういうトラブルが増えてきているんでしょうね。
 
 

■ 結論:TSAロックは、掛けないほうが良い。

うちの奥さんはいつも、電気製品のコード類などを留めてある「ビニタイ」を、スーツケースのファスナー2つの穴に通して留めています。
これが一番被害とコストの少ない方法ですかね。
これだったら荷物運送中に多少振動してもファスナーは開かないし、TSA職員も簡単に開けられて、「ビニタイ」壊しても元値がタダからね・・・そもそも、壊しようが無いしね。
なかなか馬鹿に出来ないですよ、この方法。
奥さん曰く、スーツケースをTSA職員に開けられた後も、ちゃんとビニタイを元に戻してくれているそうです。

 



――<●>――
関連すると思われる記事:

「TSAロックのトラブル体験談・・・TSAロックは、掛けないほうが良い!」への10件のフィードバック

  1. これもアメリカ国家としての安全コストをアメリカ国民+住民(私はnon-citizenなので)に分担してもらっているという一例でしょうか。一個人の勝手な考えですが、何となくTSAというか、こういう均一システムはアメリカにそぐわない気がしますね。

  2. 結局持ってなかったら壊されるならシステムとして成ってない気がしますがそんとこは適当なアメリカらしいシステムですね。
    先日Deltaで帰ってきた時はTSAロックをかけないで、という表示には気づきませんでした。ロックをかけていなかったからか特に案内もなかったです。

    管理人 返信:

    >先日Deltaで帰ってきた時はTSAロックをかけないで、という表示には気づきませんでした。ロックをかけていなかったからか特に案内もなかったです。

    ユナイテッドも特に口頭での確認はありませんでした。
    チェックインカウンターの横に張り紙が貼ってあっただけです。

  3. NYからTSAナンバーロックはしないで締めて成田で受け取ったところ
    ロックが外れていて締めてみたもののバクバクでパチンとかからす、
    事故証明を作ってもらいました。
    家に帰って試に何回か締めたらパチンと閉まりました。
    何回かやってみましたが大丈夫だったので修理点検に出さずに、
    今度からは私もビニタイにしようかと思いました。

  4. 写真の工具は普通の六角レンチで間違ってるよ。
    トルクスねじ用レンチを使ってね。(星形レンチとも言う)

    A Yoshida 返信:

    写真の工具はT-2トルクレンチで間違っていませんが、写真の焦点が金属部分の付け根に当たってるので、6角(ヘックス)に見えるだけです。
    この工具の先っちょは写真では焦点が合わずボケています。

    A Yoshida 返信:

    写真を撮り直して、変えました。(画像キャッシュをクリアしてください。)

  5. たしかに普通の六角にしか見えないw

    A Yoshida 返信:

    写真を撮り直して、変えました。(画像キャッシュをクリアしてください。)

コメントは受け付けていません。